[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2013年10月28-11月3日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今週は米欧関係が騒がしい。NSAが何とドイツのメルケル首相の携帯電話を盗聴していたそうだ。彼女は激怒し、近く情報部門のトップを米国に派遣するという。オバマ大統領が「知ってたら止めさせた」旨答えたとも報じられた。一体何やってんだか?
誤解を恐れずに言おう。同盟国の信頼が崩れる?冗談だろう。米国は第二次世界大戦中も同盟国である英国の政府内通信を盗聴していた。そもそも国家が、自国の同盟国をも含め、他の国家について情報収集するのは決して不思議なことではない。
同盟国であっても盗聴はする。だが、それによって得た秘密情報は極力悪用せず、少なくとも当該同盟国の不利益となるような形では使わない(または、そのように努力する)のが同盟国間の信頼のルールではないのか。少なくとも筆者はそう思っていた。
メルケル首相は激怒した?何とナイーブなことか。あなた、まさか機微な話をその携帯電話でしなかったでしょうな。秘話装置のない電話で極秘の話はしない、というのが世界の常識だ。米国が聞かなくても、ロシアや中国が必ず聞いているだろう。
オバマ大統領もよく言う。彼が知らないはずはない。「盗聴されたくなかったら、ちゃんと暗号をかけろ、それが常識だ」とでもメルケル首相に言えば良かったのに。勿論、彼女は全て理解した上で「激怒」している。あれはドイツ国民に対するポーズだろう。
個人的には11月1日の米イラク首脳会談が気になるところだが、恐らく今週日本にとって最も重要な外交案件は11月2日の日露「2+2(外務・防衛担当大臣会議)」ではないか。筆者を含め、あの冷戦時代を知る者には隔世を感じる会合だ。
日露で如何なる共同発表があるのか、ちょっと気になるところだ。中国はあらゆる手段を使ってでも情報を得ようとするだろう・・・。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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