[為末大学]【こうなったのは誰のせいか】〜守られすぎると自分で自分を守ることが出来なくなる〜
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
新潟で子供小中学生が自転車に乗る事を控えるようにと要請があった。自転車に乗ると怪我をして危ないからだという。反対意見も多かったが、面白いなと思ったのは、自転車で転んで怪我をする事は市の責任なのかについて。
今の自分になったのは誰のおかげで誰のせいか。学校の教育のおかげかもしれないし、そのせいでこうなったのかもしれない。親かも家庭かも、友達かも社会環境かも、国家かもしれない。自分だけで自分になるのではなく環境の中で自分になる。
海で溺れたとしてそれは誰のせいか。ちゃんと安全を守っていない市の責任か。それとも自分で自分を守れなかった自分の責任か。それとも親のせいだろうか。社畜という言葉がある。会社に入ったときは自分の意志だったけれど、入ってみると違ったという事なんだと思う。
私の身は誰が守ってくれるのか。もし守られなかった時、誰のせいなのか。自分を誰が成長させるのか。成長できなかった場合、それは誰のせいなのか。自分の人生は誰が決めていくのか。
守られる事は一見優しい事かもしれないけれど、守られる事に適応してしまった生き物は、自らで自らを守る事ができなくなってしまう。それが無ければ耐えられないというものに人は支配される。守られすぎれば依存の関係が始まる。
責任は重なり合っていて、守る事守られる事もつながっていて、バランスを押し引きしているように思う。僕は臆病だから、守られている時それが無くては生きていけない自分になってしまいそうで、距離を置く癖がある。
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