[宮家邦彦]【小渕陣営、米ではあり得ない素人集団】〜議員の政治活動組織化が必要〜
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(10月20-26日)」
今週はワシントンでこの原稿を書いている。日本出発時、成田空港のテレビでは小渕経済産業大臣の辞任表明記者会見が生中継されていた。個人的に同大臣とは面識がない。だから、今回の事件も、公職選挙法違反でけしからんという以外、特別の感慨はない。今回は、およそプロとは思えない、情けない話だ。
それにしても、万一このようなことで、将来の女性首相候補が一人減ってしまうのだとしたら、それは日本にとって結果的に損失かもしれない。政治の世界だから、敵がいれば、味方もいる。それを一定のルールの下で、組織的に戦うのが内政ではないか。この点は民主主義国家各国すべて共通であり、決して言い訳は許されない。
先日米国の元連邦議会議員と話す機会があったが、米国でこのようなミスを犯せば致命的だと言っていた。米議員の政治活動は実に組織化されている。日本でまだ「素人まがい」の違反があるということは、この議員の政治活動が全く組織化されていない、ということだ。組織を改革し、出直して、総理を目指してほしいものだ。
ワシントンでは「イスラム国」よりも「エボラ熱」の方が内政的に問題となっているようだ。だからだろうか、空港の雰囲気も何となく緊張しているように感じた。それに比べれば、日本はまだ「エボラ熱」に関する危機感が少ないように思える。エボラの潜在的感染者が欧米諸国にしか行かないという保証など全くないのに。
筆者にとって今週の最大のハイライトは中国の四中全会(四中総会)だ。ここで、中国の経済政策に変化があるがどうかは、エコノミストでなくても、大いに気になるところである。習近平と李克強の関係はどうなるか。改革の行方とも絡んでいるので、ちょっとこれは目が離せない。
もう一つ、あまり目立たないが、気になるのがチュニジアの選挙である。いわゆる「アラブの春」現象の中で、唯一まともな動きをしているのがチュニジアだ。この国がこけたらば、アラブに明日はない。逆に、チュニジアでいわゆる「民主化」が本当に定着すれば、数少ないアラブ社会の民主的動きとして歴史に残るだろう。
今のチュニジアはその分岐点にいる。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
http://www.canon-igs.org/blog/
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