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経済  投稿日:2014/12/11

[田村秀男]【中国よさらば、製造業は日本回帰せよ】~1ドル=120円時代、中国経済打撃~

夜明け
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田村秀男(産経新聞特別記者・編集委員)「田村秀男の“経済が告げる”」

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あれよという間に1ドル=120円時代だ。国内では円安効果の評価が分かれ、輸入コストの上昇を憂慮する声もあるが、原油価格の下落でマイナス効果はかなり相殺されているのが救いだ。

国外、特に中国、韓国への影響はどうか。輸出で日本と激しく競合する韓国は、朴槿恵(パク・クネ)大統領が円安批判を口にするほどだから、打撃の大きさはかなりのものだろう。

中国ともなると、表立った円安への反発は見られないが、2年前のアベノミクス開始後、この12月5日時点で人民元は円に対して実に5割以上も切り上がったことになる。1985年9月の「プラザ合意」後のドルに対する円に匹敵するほどの急激な円に対する元高の速度である(グラフ参照)。日中経済関係が衝撃を受けないはずはない。
円高と元高改訂版

<グラフ:円高と元高>

 

中国の物流を代表する鉄道貨物輸送量は2012年秋以来の円安トレンドに共振するかのように急下降している。その間、昨年第4四半期以外は前年比マイナスだ。中国製造業の購買担当者指数(PMI)の輸出新規受注は伸び悩んできた揚げ句、10、11月は前年比マイナスだ。実質経済成長率は7%台だと北京当局は発表しているが、国内総生産(GDP)の半分を構成するモノの動向はマイナス成長を示している。他方で、中国の賃上げは毎年10%以上で推移している。

リーマン・ショック後の景気を牽引してきた不動産開発投資が不動産市況の悪化に伴って急減しているうえに、輸出が増えない。対中進出企業では、内需を目当てにしてきたサービス業種も、人件費などの低廉さを見込んで中国での生産を拡充してきた製造業も、ここは思案のしどころだ。

中国が難局を打開するためには、元の対ドルレートを切り下げるのが手っ取り早いが、管理変動相場制度をとっているために、身動きがとれない。米議会から人為的な為替操作だと非難されて制裁されかねない。もう一つ、小刻みながら、人民元を切り上げないと、年間数千億ドルにも上る「熱銭」(共産党幹部など特権層の投機資金)が国外逃避しかねない。

ドルに対する円安基調は、日本の異次元金融緩和や米国の利上げ期待からみても、定着する公算が大きい。さらに、元に対する円安の進行速度は対ドルを上回るのは間違いない。

今回の衆院総選挙で与党が圧勝しようものなら、安倍政権はアベノミクスをまき直して、4月の消費税増税以降、急降下した内需を立て直そうとするし、日銀も円安誘導策を継続するだろう。

円・元の為替レートでは日本での生産コストが中国よりも5割も改善したのだ。それにチャイナリスクもある。日本企業が重点投資先を中国から他のアジアに移す動きはすでにはじまったが、今や生産を中国から母国に回帰させる条件が整ってきた。安倍政権は法人税実効税率引き下げに限らず、この機を逃さず包括的な製造業呼び戻し政策を打ち出すべきだ。

 

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