.政治  投稿日:2014/12/29

[清谷信一]【自衛隊の戦力は大きく弱体化する】~安倍政権の無邪気な兵器”大人買い“~

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清谷信一(軍事ジャーナリスト)

執筆記事プロフィールWebsiteTwitter

 

今年は自衛隊の大幅な弱体化が進むだろう。その原因は安倍政権の無邪気なアメリカ製の高価な兵器の「大人買い」である。来年度予算以降、中期防衛力整備計画では滞空型大型無人機グローバルホーク3機、水陸両用装甲車、AAV752輛、ティルトローター輸送機、V-22オスプレイ17機が4年で調達される。

いずれも調達に毎年1000億円以上の巨額の費用がかかる。

防衛費は有り余っているわけではない。これら新型装備は物件費に含まれるが、「後年度負担」と呼ばれるツケ払いが可能である。防衛装備などは最大5年間の繰り延べ払いが可能となっている。

それは兵器などの装備の製造に年月がかかる場合が多いためではあるが、予算が少なくて単年度では支払えないという側面も大きい。このため大きな案件では本年度の予算はゼロ円で、次年度以降の4年間で支払うケースが少なくない。

つまりこの制度はクレジットカードのリボ払いのようなシステムだといえる。その「リボ払い」の比率は年々増えている。

来年度の防衛予算の概算要求では物件費(契約ベース)が3兆6,107億円で、その中で27年度予算での支払いは1兆342億円に過ぎず、後年度負担2兆5,766億円にも上る。防衛省はこれまでの、毎年少数ずつ装備を調達する方法ではコストが高いとしてまとめ買いを推進している。その一環として海上自衛隊のP-1哨戒機を来年度予算で20機を一括調達することによって403億円を削減することにしている。

だが、「リボ払い」が増えれば、そのような「まとめ買い」が出来る余地が無くなってくる。例えば月給30万円のサラリーマンが毎月5万円のリボ払いを使用しているのと、毎月20万円をリボ払い当てるであれば、後者の場合には使える小遣いの自由度が減るのと同じだ。リボ払い以外の10万の内、家賃などの支払いなどの固定費を除けば、つかえる小遣いは数万円程度だ。対してリボ払いが5万円程度ならば使える小遣いの自由度は大きい。この後、年度負担が増えれば増えるほど、予算の機動的運用や、効率的な一括調達ができづらくなる。

筆者の過去の記事で述べているが、上記の米国製新型装備は、初めに調達ありきという結論があり、導入にあたってまともな調査や評価すらされていない。グローバルホークは1週間に数回程度しか使用できず、AAV7は島嶼防衛に使用するといって尖閣諸島などでは運用に適しておらず、宮古島や沖縄本島などの大きな島での上陸作戦に使用できず、焦眉の急となっている事態には役に立たない。

何しろ既に旧式で、時代遅れとなっている装備だ。オスプレイにしても降下に時間がかかり、機動力が低いので被撃墜率が極めて高い。長駆して輸送が必要ならば既存のUH-60やCH-47といったヘリに空中給油機能を付加するほうが余程コストが安く付く。

新装備に必要なのは調達費用だけではなく、新たな部隊の編成が必要である。少なく見ても五百~千名程度の人員が必要となる。つまり毎年の固定費用が増大する。ところが、予算の約43パーセントを占める人件糧食費などは削れない。となれば、訓練費や装備の修理費、演習費、兵站などを削るしかない。

これまでも自衛隊は他国の数倍もすることが多い新装備の調達ばかりに熱心で、それ以外の予算を極端にケチってきた。例えば80年代や90年代に採用された装甲車は近代化は勿論、オーバーホールすらされずに稼働率が大きく下がっている。また兵站を担うトラックの類も定数を大きく割り込んでいる。実際問題として戦闘組織として戦争ができるレベルにはないと筆者は考えている。

当然ならが国の借金が1000兆円を超え、毎年一兆円ずつ社会保障関連予算が増加している状態で、防衛予算を大きく増やすことはできない。安倍政権の無邪気なアメリカ製「玩具」の「大人買い」は、この戦力の低下を助長するだけであり、自衛隊の一層の弱体化を進めるだけだ。

現状を見る限り、兵器調達を通じて華やかな新兵器を調達しアメリカに貢げば我が国の安全保障、と信じ込んでいるとしか思えない。それは程度の悪い兵器フェチと同じであり、我が国はそれと同じ程度の人物が今後4年間も自衛隊の最高司令官として君臨することになる。これこそがまさに“国難”である。

 

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