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IT/メディア  投稿日:2015/1/4

[安倍宏行]【2015年はウェブ・メディア淘汰の時代】~質への転換が求められる~


 安倍宏行(Japan In-depth編集長/ジャーナリスト)「編集長の眼」

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昨年はバイラル・メディア、ニュース・キュレーション・アプリが勃興し、戦国時代に突入した。あまりにたくさんのバイラル・メディアが誕生し、しかも同じコンテンツを使いまわすものだから、どれがどれなのかわからない始末。既にひっそりサイトを閉じたものもある。

しかし、もっと困ったことには、バイラル・メディアの一部に、海外コンテンツや他のメディアのパクリが多発したことだ。それを他のウェブ・メディアがすっぱ抜いて炎上したり、有名ブロガーが自分のブログを他のウェブ・メディアに無断でパクられたことで法的手段に打って出たりして、ウェブ・メディア全体の信頼が毀損されたことは大変残念なことだった。

また、巨額の資金を調達し、テレビコマーシャルを派手に打ち、加入者数を競い合っているキュレーション・アプリ戦争も激化の一途をたどっている。その理由には、やはりスマホの普及が加速していることが上げられよう。

視聴者行動分析サービスを提供するニールセン株式会社の調査によると、「ニュースと情報」サービスのカテゴリー全体でのスマートフォンからの利用者は、今年の6月にPCからの利用者を逆転し、10月の時点で3,900万人となったという。

また、ニュース・キュレーションアプリは、2014年10月時点で、全てのアプリで利用者数が伸びており、1位のSmartNewsは年初から2.1倍の385万人、2位のグノシーは2.4倍の298万人となったという。Japan In-depthもPCからの閲覧とスマホからの閲覧の比率が去年の夏以降逆転した。大画面のiPhone6の発売が大きかったと思う。

こうした中、キュレーション・アプリで気を吐いているNewsPicksの佐々木紀彦編集長が「スマホ時代の王座をかけた「勝負の1年」が始まる」と題した記事でメディア界の今後を大胆予測している。曰く、スマホシフトはますます加速し、「伝統メディアvs新興メディア」という構図は終焉を告げ、新旧入り乱れた戦国時代に突入する、というのだ。

佐々木氏は、NewPicksは経済ニュースに特化し、垂直的に独占構造を築くことによって有料課金や単価の高い広告を獲得し、収益化を目指す、としている。今年は、キュレーション・アプリの中でも淘汰が進むであろう。

こうした流れが加速する一方で、より質の高い記事、オリジナルコンテンツの重要性が高まっていくだろう。今のところ、オリジナル記事を主軸に置いているウェブ・メディアはほとんどない。今後、コンテンツの“オリジナル度と質の高さ”を前面に出したメディアの新規参入が増えてくるだろう。

既存メディアは混迷

一方、既存メディアはますます混迷の度を深めていく。活字メディア、まず新聞の購読者数は減少の一途をたどる。生き残りの道はやはりウェブ化だが、まだコンテンツの中身は不十分だ。朝日新聞はデジタル・ジャーナリズムで一日の長があるが、それでも紙面とウェブとまだうまく連動していない。インフォグラフィックスを多用し、データを駆使してよりわかり易く、目に訴えるコンテンツの開発が急務だろう。

雑誌もデジタル化が遅れている。特に一般週刊誌は、せっかくいいコンテンツを持っているのにそれがウェブで見れなかったりする。グループで新聞、週刊誌、テレビまで持っているところは、一つのコンテンツをウェブも含め、複数のメディアで特集したりする試みに挑戦してみたらどうだろうか。

地上波テレビは引き続き暗中模索が続くだろう。ネット配信などが検討されているようだが、まだ端緒についたばかりであり、その影響は未知数だ。ネットとの連動ということで、ニュース動画のネット配信などは活発になってきたが、それがニュースのリアルタイム視聴に貢献しているかどうかは疑わしい。

地上派ニュースは速報性においてネットに負けているのに、相変わらずストレートニュースとエンタメに主軸を置いている。おためごかしにネットでの情報を紹介するコーナーを設けても、外部委託で内製ではなかったりする。これではノウハウは局内に蓄積されず、人材の育成も進まない。本来視聴者が求めている、ニュースの解説や継続報道、調査報道といった分野を開拓しないと、視聴者のニュース離れはさらに加速しよう。

2015年は、既存メディアにとっても、新興メディアにとっても、厳しい年になりそうだ。

 

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