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.国際  投稿日:2013/11/27

[藤田正美]米国の「弱さ」を突いた中国の防空識別圏〜尖閣諸島の領空をも含んだ「挑発」


Japan In-Depth副編集長(国際・外交担当)

藤田正美(ジャーナリスト)

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中国が新しい防空識別圏を東シナ海に設定した。その識別圏が尖閣諸島の領空を含むものであったことと、日本の防空識別圏と大きく重なることから日本政府は反発している。それは当然だ。自国の領空を飛行するのに、外国の軍からとやかく言われる筋合いにはない。ただ勘違いしてはいけない。防空識別圏は別に領空を主張しているわけではない。あくまでも「緊急発進(スクランブル)するかどうかのライン」であり、その設定は各国が任意に行うものである。

中国側はこう説明している。

東中国海防空識別圏の設定後、防空識別圏に進入し、識別に協力しない、または指示に従わない航空機に対して、中国が武力による防御的な積極的措置を講じる(人民網日本語版11月25日)

第一の問題は、尖閣上空は日本の領空であり、そこで中国軍機が識別を要求する立場にない。中国がいかにそこに領有権を主張しているとはいえ「実効支配」をしているのは日本だから、その上空に防空識別圏を設定するのは、いわば「挑発」である。

第二の問題は、防空識別圏で指示に従わない航空機に対して武力による防御的な積極的措置を講じる、としていることだ。米国務省が発表した声明にはこの点に関する懸念がはっきりと書かれている。「アメリカは領空に進入しない外国の航空機に対して識別を要求することはしない。中国のそのルールに従うことを要求する」

防空識別圏は、アメリカが言うとおり、領空ではない。したがってそこで外国の航空機に対して識別を要求することはできない。まして強制着陸などということはありえない。まさか中国軍がそんなことを知らないはずはないだろうが、もし本気でこんなことを考えていれば「偶発的衝突」が起きないとも限らない。

ただ日本は、もう一つ留意しておかなければならないことがある。中国が「挑発」を強めているのは、それだけ自信をつけてきたということでもある。それはアメリカの存在感が薄れているからだ。オバマ大統領は、シリアの化学兵器をめぐる外交では敗北した。シリアに軍事介入するかどうかという瀬戸際で、議会に諮り、時間をかけてしまった。その間ロシアがこの問題に介入して、アサド政権に化学兵器を破棄させることに成功した。オバマ大統領が議会に諮ったのは、その前に、やはり介入すべしとしていたイギリスのキャメロン首相が、議会の反対にあって、軍事介入を断念したからだ。

つまりオバマ大統領は、腰が引けたと判断され、同盟国やアラブの親米国からは頼りにならないと判断されてしまったのである。とりわけイスラエルのネタニヤフ首相は、オバマ大統領への不信感を隠そうとはしない。今回のイランとの核開発をめぐる合意についても、イスラエルは当然のことながら、いざとなれば原子炉を爆撃する構えを崩していない。

オバマ大統領はこのところ内憂外患なのだ。内遊の一つは、「ねじれ議会」であるために2014年度予算も暫定になってしまったし、政府債務の上限引き上げでもごたごたした。来年初めにはまたこの問題で共和党とやり合わなければならない。さらにオバマ大統領の看板というべき政策でもみそをつけてしまった。健康保険改革の実施で、国民から受け付けるためのサイトがまともに動かなかった。このため、オバマ大統領の支持率が落ちている。最近のCNNによる世論調査でも、オバマ大統領を信用できないと答えた人が過半数にのぼった。

こうした内憂外患があるため、オバマ大統領がアジアへコミットすると言っているのに、中国はなめてかかったのかもしれない。安倍首相は、中国の防空識別圏について国会でこう答えた。「アメリカと緊密に協議して対応する」しかしその肝心のアメリカの外交パワーが落ちているとすれば、日本がその間隙を埋めなければなるまい。中国はそこを慎重に見守っているだろう。

 

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