[宮家邦彦]【中露の弱者同盟、弱体化必至】〜モスクワ、第二次大戦記念式典に見る〜
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2015年5月11-17日)」
今週はモスクワで第二次大戦戦勝記念式典があった。10年前は欧米主要国を含め50カ国が参加したそうだが、今回はかなり見劣りする。そりゃそうだろう。参加はわずか20カ国、しかも主客は中国の習国家主席だ。ロシアも落ちぶれたものである。
日本のメディアは中露蜜月を盛んに報じていたが、中露の連携は結局のところ「弱者同盟」に過ぎない。要は両国が失敗を続けているからこそ成り立つ関係であって、逆にどちらか一方が成功すれば、早晩弱体化していく運命にあると思う。
そもそも、ロシアには軍事力と資源以外に誇るものがない。他方、中国の軍事力には限界があり、以前の高度成長はもう望めない。両国とも一定の国力はあるから当面独裁政治は続くだろうが、この脆弱な両帝国の連携にwin-winは見込めない。
〇欧州・ロシア
12日にギリシャが8億ユーロ近いIMF融資の返済期限を迎える。「義務を果たす」というが本当に払えるのか。結局ギリシャ「破綻」は誰も見たくないから、最後はIMFかドイツが譲歩するのだろう。ギリシャもそれで足元を見ているのか。困った人たちだ。
今週興味深いのは地中海で中露海軍が共同演習を行うことだ。双方から計10隻以上の艦船が参加するらしい。ロシアが中国と組んでNATOを牽制できるのか疑問だが、今は象徴的でも、今後中国海軍がどの程度運用能力を高めるかは気になる。
ほぼ同時期に欧州米陸軍とジョージア(グルジアのこと、実に紛らわしい)がNoble Partnerと呼ばれる共同訓練を行う。ジョージア軍がNATO即応部隊に貢献するのだそうだが、中露の動きとの関連で考えると、このような動きも結構興味深い。
〇中東・アフリカ・アメリカ両大陸
12日からイランと欧州連合(EU)の核協議がウィーンで行われるが、打開の目途は立っていない。これに呼応するかように13-14日にはオバマ大統領と湾岸協力会議(GCC)6カ国首脳がワシントンとキャンプデービッド山荘で協議を行う。
流石のオバマ政権もサウジやUAEからの突き上げに抗しきれなかったのか。それにしても、何たる泥縄だろう。職業柄、湾岸の金持アラブにシンパシーはないのだが、今回ばかりは大いに同情した。17日にはリヤドでイエメン停戦が話し合われる。
〇東アジア・大洋州
12-13日にソウルで日中韓自由貿易協定(FTA)交渉が首席代表レベルで行われ、13-14日には日韓経済人会議が同じくソウルで開かれる。最近この種の会合が増えたことは喜ばしいが、それにしても今、韓国大統領は何を考えているのだろう。
10日から海上保安庁の巡視船がダナンに寄港し、ベトナム海上警察との会合やスポーツ親善試合などに参加するという。そういえば海上自衛隊の護衛艦2隻も4月中旬ダナンに寄港している。14-15日にはワシントンで第28回目の米ASEAN対話が開かれる。南シナ海での様々な準備は着々と進んでいるようだ。
〇インド亜大陸
14-19日にインド首相が中国、モンゴル、韓国を歴訪する。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。