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.経済  投稿日:2013/12/9

[安倍宏行]被災地農業復興の新しい形〜被災地・宮城の最高級イチゴで作られたスパークリング・ワイン


Japan In-Depth編集長

安倍宏行(ジャーナリスト)

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「あま~~い!」「飲みやすいっ!」「香りがいい!」「色もかわいい!」女子の口から出るわ出るわ、招賛の嵐…。この淡いピンクの液体を飲んだ直後、彼女たちに感想を聞いた。一見、普通のロゼ・スパークリングワインに見えるのだが、このボトルには様々な顔がある。

gazou202「ミガキイチゴ・ムスー」と名付けられたこのスパークリングワイン。その名の通り、原材料は「ミガキイチゴ」。宮城県山元町という被災地で作られている最高級イチゴである。その地には、イチゴ栽培の匠の技にITをかけ合わせた、最先端のハウスがある。いちご農家を30年以上やってきた橋元忠嗣さんと出会い、震災で大きなダメージを受けた山元町のイチゴ栽培を復活させようと思い立ったのが、農業生産法人株式会社GRAの岩佐大輝さんだった。

岩佐さんも山元町出身でおじいさんもイチゴ農家。そして彼はハウス内を栽培に最適な環境に管理する為にITを利用することにした。二酸化炭素が足りないとセンサーが感知し、二酸化炭素が出てくる。温度が低くなれば、暖房が自動的に入る。湿度も管理されている。これまで人力に頼っていた農業が、ITで効率的に生まれ変わった。

元々山元町は、山と海に囲まれた空気の綺麗な町であり、長い日照時間と昼夜の寒暖差や南西gazou203の冷たい風などが甘いイチゴを作るのに最適だった。そこにITを掛け合わせ、高品質なイチゴを安定的に生産することができるようになった。さらに、熟練のイチゴマイスターが、一番おいしい瞬間を逃さず摘み取り、最高のイチゴを消費者に届ける努力をしているという。

甘さ、香り、食感、大きさ、形、輝き、色、どれをとっても最高級のイチゴが出来あがった。それが、「ミガキイチゴ」なのだ。そして、このスパークリングワイン、「ミガキイチゴ・ムスー」。「ミガキイチゴ」を100%使って作ったワインで、やや甘めの味、強めの炭酸、高めのアルコール度数(12度)、フルーティーなイチゴの香り、着色料を使わないサーモンピンクの淡い色が特徴である。

筆者も一口飲んでその強烈な香りに驚かされた。そして、甘い酒は苦手だが、そんな私でも何の違和感もなく飲める、不思議な味。おそらくは強めの泡が舌を刺激し、甘さを中和しているのではないだろうか。

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ミガキイチゴ・ブランドマネージャーの馬場俊輔氏に聞いた。

このプロジェクトは、4つの側面を持っています。一つは、震災からの復興。2番目は、農業にITを利用している技術革新。3番目はいわゆる農業の6次化。そして最後が、日本の農業の海外展開、クール・ジャパンです。

なんと、岩佐氏は、インドにいちごの植物工場を建てているという。インドという巨大マーケットを視野に入れている。被災地からグローバル企業を輩出するんだ、という物凄いチャレンジだ。そして、ソーシャルでもある。女性の就労機会が無いインドで、イチゴ栽培という働く場を提供していきたいと岩佐氏は言う。震災という負の遺産から決別する、いや、それを踏み台にして世界に飛び出していく。アジアの社会の課題を解決できるかもしれない。いや、するんだ。

震災は一時的に農業や漁業にダメージを与えた。しかし、逆に人は強くなった。山元町の匠の技が。日本の農業xITが。日本を飛び出し、アジアに広がって行く。

私達の知らない内に、それは既に始まっているのだ。

 

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