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.社会  投稿日:2013/11/9

[被災者からの声]今、知ってほしい東日本大震災後の福島~行き先となる住宅がない~


一般社団法人 東日本大震災復興サポート協会

(旧:関西県外避難者の会 福島フォーラム)

代表理事 遠藤雅彦

 

東日本大震災について、復興に関わる明るいニュースは時折遠方まで届くが、被災者の実生活の問題について聞こえることはほとんどなくなった。

福島の問題は、一言で言い表せない。被災地の姿も、地震被害の少ない地域と多い地域、沿岸部の津波被災地域、原子力災害による汚染地域、原子力災害による汚染の補償のない地域など多岐に渡る。僕自身は津波で家を失い、原発事故があり、いわき市を離れた。

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巨大災害に遭うということが、自分自身の生き方をガラリと変えてしまって2年7か月が過ぎた。我が家は相変わらず門柱が二本立ったままで、家の前の堤防は土嚢がならんだままだ。この高台移転を選ばざるを得ない海辺の地域には、もう家を建てられない。高台移転するという土地の造成には10年かかると言われている。

平成23年3月11日、津波で家が失われて、原発が爆発して、行く宛てを求めて大阪へ逃げ延びて、路上生活者扱いを受けながら、友達、恩師に助けて頂き、仲間と同じ避難者を助ける活動を興して、故郷福島とのつながりを保ちながら走る中でも、僕たち被災者は支援施策から取り残されていった。

 見過ごされている問題で僕が最も懸念しているのは「安心して住める住居がないこと」である。震災後は県内に仮設住宅が順次設けられ、多くの方は被災者の僕たちは無事に住んでいるだろうと思うかもしれない。しかし、仮設住宅での生活は厳しい。東北の寒さには向かない。あくまで仮設住宅なのである。加えて全国には5万人の避難者がいる。

震災から三年目を迎えるというのに「災害公営住宅」や「災害復興住宅」というものに順次入居が始まっているという話はごく一部を除いて増えていかない。未だ手つかずの場所すらある。福島県内では最初の入札が不調に終わり、再度調整が開始された。

さらに家賃が高いという問題も起きている。東北は元々低賃金で持ち家で共働きだからなんとか生活できていた世帯も多く、家賃負担がないから、なんとか安定して生活できていたのだ。住環境の変化は、安定した生活から一転させてしまう。

阪神大震災の時は、災害復興公的賃貸住宅の供給が震災後1年半でスタートし、入居条件などの問題と向き合いながら震災後5年で仮設住宅入居者は0になった。

今では震災から18年経ち・・・今度は住宅からの立ち退きについての問題が吹き上がるようになった。まるで未来の僕たちを見ているようであるが、今回は住宅建設の 始まりからおかしい。東日本大震災では3年経とうとしているのだが、仮設住宅から出る見通しが立たない状況が続いている。住宅の安定が図れるかの問題は被災者の健康だけでなく、仕事にどう就くことができるかなどの、人生設計の根底を揺るがすものである。公が整備する住宅では数が足りない。足りないだけではなく、生活環境の整わない地域にも災害公営住宅が建とうとしている。

福島が抱える問題は地震や津波による破壊だけではない。放射能汚染とどう向き合って過ごすかも日々の課題である。もちろん、福島県外にも除染が必要な汚染が広がってしまったことはいうまでもない。原子力災害により福島の場合、災害復興住宅の役割について、「避難先からの帰還・福島県内での居住を安定化させる」という、二つの側面が必要とされている。

問題となるのは入居要件であるが、阪神大震災の時のように全壊または半壊のみでは不十分で争いが起きたように、今回も自然災害被災世帯と原子力災害被災世帯では様相が違う。被災世帯を中心に入居要件は決まるものの、原子力災害の補償外となっている避難者には入居要件が無い。故に、自宅の除染が済んでいなくても、帰らざるを得ない世帯が生じている。そして、安心して住める場所についても福島県内外にやむなく新たに見つける必要が出てしまった。福島県内だけに災害復興のための住宅が必要であるということはない。災害復興のための住宅はすべての避難世帯にも必要なものである。「避難後の安定」を支えていかなければ生活再建は難しい。

東日本大震災復興サポート協会として災害復興住宅建設の計画をスタートさせて現在に至るが、県外からでもいわき市内からの問い合わせでも、もとの場所に戻れないから助けてほしいという声が上がっている。そして、県外へも災害復興住宅を作ってほしいという声がある。

東日本大震災については、子ども・被災者支援法により「避難・居住・帰還」の三側面の安定を考えるという姿勢が必要不可欠なのだ。しかし今は、帰還のみが強調されがちな状況にある。

問題は山積みなのだが、一つ一つ福島が抱えている問題を伝えていきたい。

一般社団法人 東日本大震災復興サポート協会代表理事・遠藤雅彦氏

【プロフィール】

いわき市豊間出身。2011年3月11日、東日本大震災により住宅流出。大阪市へ避難。東日本大震災後に関西へ避難した避難者について自立を目指したサポートをしている。特に福島県を対象として活動

 

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