[安倍宏行]冬のボーナスから見る日本経済の先行き〜目先の国内市場の好転にぬか喜びしている時間はない
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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「日銀短観」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
要は企業経営者が景気の先行きをどう見ているかを現す指標だと考えればいいだろう。先行きが明るければ数字が良くなり、暗ければ悪い数字が出る。16日、12月の全国企業短期経済観測調査[短観:注1]が発表され、企業の景況感を示す指標である、「業況判断指数(DI=Diffusion Index)」が大企業製造業でプラス16となった。これで、4半期連続で改善した事になる。
その背景はむろん円安である。製造業を中心に輸出が増え、生産増が見込まれている。來春の消費税増税前の住宅関連や内需関連の駆け込み需要、公共投資の増加などもあろう。実際に、こうした景況感を裏付けるかのように、冬のボーナスも堅調だ。自動車・部品メーカーの支給額はプラス10%を越している。ホンダ自動車は20%増、トヨタ自動車も12%増、デンソーが8%増というからいかに業績がいいかよく分かる。
スマホ関連で電子部品メーカーも好調だし、食品、不動産、鉄道なども良い。一方で、円安による原材料価格アップにより、鉄鋼などは収益を減らしている。円安に支えられた好調さが来春のベースアップに繋がるかが焦点だ。大企業が直近の生産を増やせば雇用が増え、結果として消費が増えることになる。さらに設備投資を増やすところまで、経営者のマインドが改善しているかどうかがカギとなる。
損害保険大手の損保ジャパンが、英国の中堅損保「キャノピアス」を約1千億円で買収する交渉を進めているとの報道もあったが、縮小する国内市場からの脱却は各企業の至上命題である。目先の国内市場の好転にぬか喜びしている時間はない。新興国の成長市場を取りに行かないと、息切れするのは間違いない。
一方で、国内にも眠っている成長市場は確実にある。それが医療や介護の分野だ。予防医療分野はまだまだ未開の地である。成人病予備軍は我々の想像を超えて増えている。厚生労働省の調べによると、40才から74才の男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリックシンドロームだという。その該当者は960万人、予備軍は980万人、合わせて1940万人という驚愕の数字もある。
こうした現状は子供たちにも広がっているという。部活をやらず、全く身体を動かさない子供たちもいるようだ。このままでは医療費は増えるばかりである。その先には介護が待っている。こうした流れを断ち切る為にも、予防医療の分野に企業は注力すべきだろう。そこには確実に需要がある。
日本は世界に先駆けて少子高齢化に直面しているが、お隣中国を含めアジアの各国も高齢化は待ったなしだ。日本が官民挙げてどう高齢化に立ち向かうか、各国は見守っている。そのノウハウは海外に売ることも可能だ。新たな需要が新興国に生まれる事になる。
大企業が動かないのなら、中小企業が新規事業を興しこの分野に挑戦すべきだ。宝の山はまさに今私達の目の前にあるのである。
[注1]日銀短観
「企業短期経済観測調査」の通称。日本銀行が4半期ベースで上場企業や中小企業に行う業況調査のこと。日銀短観には「計数調査」と「判断調査」がある。「計数調査」は売上高、雇用者数、金融機関借入金などを計数的に計るもので、「判断調査」は生産、売上、在庫調査、設備投資、企業収益、雇用、企業金融、の項目に対して「良い」「さほどよくない」「悪い」の三つから選択するもの。「判断調査」は好況感を感じている企業の比率から感じていない企業の比率を引き、DIという指数にして算出、このDIは景気判断の指標となっている。
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