[安倍宏行]「期待はずれ」2014年度税制改正〜20年続いたデフレスパイラルとの決別には「官頼みでない民のさらなる挑戦」が不可欠
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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一言でいえば「期待はずれ」だ。
自民、公明両党は12日に2014年度の税制改正大綱を決定したが、法人実効税率引き下げは見送られたからだ。法人税減税の効果とは何か。一つには、企業の海外移転を防ぐ効果。裏返せば、海外企業の日本進出の呼び水になる。又、設備投資や研究開発、雇用、給与を増やす効果も期待される。現在日本の法人実効税率は、今回の税制改正に盛り込まれた復興特別法人税1年前倒し廃止によって、38.01%から35.64%に下がるが、それでも他国の20%台と比べてまだまだ高水準だ。自民党は法人税引き下げを公約としていたはず。
何故、今回ここまで腰が引けているのか。
財務省は昔から法人税減税には強硬に反対しており、1%の減税で4000億円の税収減になることから、代替財源がなければ無理、との立場だ。更に、7割以上の赤字企業が法人税を支払っていないことから、実効税率を引き下げても経済的な効果は乏しいとの主張も聞かれる。
しかし、アベノミクスの真骨頂は、これまでやっても効果が無いと言われた金融緩和で円安による景気刺激の端緒を開いたように、タブーに挑戦することではなかったか。法人税実効税率を10%引き下げれば、国内生産は4.7兆円程度増加するとの試算もあるのだ。効果が無いかどうかはやってみないとわからない。中途半端な政策ではそもそも効果が出ない。
今回の改正では、企業の交際費課税で、資本金1億円超の大企業を対象に交際費の50%迄損金として認め、法人税負担を軽くすることにした。しかし、リーマンショック後大幅に縮小した交際費がこれで一気に元に戻るとも思えない。一度財布のひもを締めた企業が突然交際費や交通費を大幅に認めるとは考えにくい。どうも小手先の感が否めない。
一方で、高所得者層の給与所得控除の縮小も図ろうとしている。これも消費税率引き上げに対する低所得者層の負担感増に対する措置と思われるが、そもそも年収1500万以上の層はサラリーマンの内数パーセント以内であり、2016年からの負担増は、年間数万円から10数万円と、余り税収増効果は無い。向こう受けを狙った改正案としか思えない。
毎年税制改正では税収中立の考えに基づき、減税分を増税でまかなう改正案が中心となるが、税の根幹にかかわる骨太の改正から逃れていては、経済活性化は到底不可能であろう。企業が投資を増やし、更なる雇用が創出され、賃金も増える。そんな好循環を生むにはどうすればいいか、政府には思い切った政策を期待したい。岩盤規制に及び腰な姿勢が目立つ安倍政権に危惧を抱き始めた人も多いのではないか。
また、企業経営者も税制頼みではなく、内部留保をどう成長分野に投資するか、迅速な経営判断が求められる。国際的な企業の合従連衡も加速している。どの企業と組めば国際競争力が増すのか、M&Aが早いのか、資本提携か、技術協力なのか。判断を誤れば一気に市場での優位性を失いかねない。従来の成功体験や、ヒット商品があるがゆえに、ライバル企業の攻勢に対抗策を打ち出せぬままシェアを落とす例も散見される。どちらも経営判断の遅れが命取りとなる。
更に、ベンチャー育成にも期待がかかる。大企業の中にあるベンチャーの種は想像以上に多いと言うが、企業内起業は中々増えないのが実情だ。一方で若者、特に女性の起業の意欲は決して低くない。エンジェル投資家やVC、大企業には思い切ったベンチャー投資を期待したい。女性の起業家が増えれば女性の雇用も増え、ウィメノミクスの実現も加速する。
2014年はアベノミクス2年目となる。その果実を更に大きく実らせ、20年続いた負のデフレスパイラルと完全に決別するには、官頼みでない、民のさらなる挑戦が必要不可欠である事は言うまでもない。
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