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.社会  投稿日:2015/7/1

[サンドラ・ヘフェリン]【刺青禁止で大混乱?日本の温泉】~東京オリンピックとタトゥー問題 1~


サンドラ・ヘフェリン

執筆記事プロフィールWeb

2020年のオリンピックが「東京」に決まった2013年当時と比べると、オリンピック・フィーバーはかなり落ち着いてきました。というよりも、新国立競技場の建設が間に合うかどうか等といったことは話題になっていますが、それ以外で「オリンピックのこと」はあまり話題に上がらない印象です。が、2020年は確実にやってきます。

日本に来る外国人には「競技を生で見ること」以外にも「日本」をタップリ体験していってほしいところですが、ネックになっていることが、ひとつ。それは「タトゥー」問題です。外国人、とくに欧米人には「タトゥー」を入れている人が大変多いです。日本のように一定の人達(たとえば芸術家や、若い人達、就職をしないフリーターの人々)の間で流行っている、というのではなく、欧米の場合はもっと「全体的」に流行っています。

欧州では若い人から中年まで幅広い年齢層の人がタトゥーを入れている現状があります。特徴的なのは、いわゆる「お堅い職業」に就いている人々にも広くタトゥーが浸透しているということ。ですから、日本の外務省だと考えられないことですが、ヨーロッパの国々に関しては、各国の外務省職員や外交官、公務員の中にも、腕や足、背中に「タトゥー」を入れている人々が既に数多く存在します。もしかしたら日本にも「タトゥー」を入れた駐日大使が誕生するかもしれません。

チェコの政治家に顔から身体まで全身にタトゥーを入れているウラジーミル・フランスという人がいます。2013年に行われた大統領選挙に立候補した際には、顔からつま先まで全身タトゥー入りのいでたちが日本でも話題になったので、おぼえている方もいるのではないでしょうか。もちろんこのような「全身タトゥー」は極端な例ではありますが、欧州では、比較的社会的地位の高い人達が腕や脚などに部分的にタトゥーを入れるというのは「よくある話」なのです。欧州の企業は一部航空会社などをのぞき「タトゥーを禁止」しているところは殆どないですし、今後も欧州でタトゥーは増え続けそうです。

さて、そんな外国人が2020年の東京オリンピックの際に大量に日本にやってくるわけですが、当然タトゥーを入れた彼らも日本の旅館に泊まりたい、温泉に入りたいわけです。ただ残念ながら彼らが日本の温泉には入れるのかというと、日本ではタトゥーや刺青は一切お断りとしている温泉施設も多いことから、筆者は「嫌な予感」がします。つまり「温泉側はタトゥーはお断りしている」。でも「外国人は温泉に入りたい」。受付でモメている光景が目に浮かびます。

というのも、「タトゥーを入れている観光客の外国人」に、「日本の温泉施設ではタトゥーはダメなんですよ」と説明をしても、説明がすんなりと受け入れられることのほうが少ないからです。必ずといっていいほど外国人に「なぜ?!」と聞かれます。筆者も、「日本でタトゥーがタブーとされているその背景」について気長に説明をするよう心がけていますが、かつての囚人の話、そして暴力団の話、昔ながらの日本の感覚では「親からもらった身体に傷をつけてはいけない」という考え方がある話をしても、理解してもらえないことも多いのです。多くの場合、「でも、僕は暴力団じゃないよ!そんなの明らかではないか!」と反論されてしまいます。

かといって温泉側からしてみると、「平等」という側面から「外国人の人だけタトゥーをオッケー」にするわけにもいかないでしょうし、これは非常に困った問題ですね。2020年、日本各地の旅館や温泉の受付で「タトゥー問題でモメている外国人」が「日常茶飯事」なんてことにならないよう、その時期だけでも「タトゥーに寛容」な旅館や温泉が増えることを祈るばかりです。外国人にも入浴等のマナーを理解してもらった上で、温泉側が「タトゥー」を受け入れれば、旅館や温泉施設にとってもオリンピックは一つのビジネスチャンスかもしれません。

さて、次回は「外国人はどういうタトゥーをしているのか」について掘り下げて書いていきます。日本の感覚でいうと思わず笑ってしまう外国人のタトゥーも多いので、楽しみにしていてください。

【日本人もビックリ!外国人の爆笑タトゥー】~東京オリンピックとタトゥー問題 2~

【日本の温泉、タトゥー許可を望む】~東京オリンピックとタトゥー問題 3~

に続く。本シリーズ全3回)


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