[西村健]【結果にコミットできてる?東京の子育て】~東京都長期ビジョンを読み解く!その27〜
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
「結果にコミットする」某企業のCMではないが、現代において自治体に期待される「結果」として最も重視されている施策の1つが、子育て施策だ。待機児童解消のための保育園の設立、医療費の無料化などを進めている。長期ビジョンでは、都市戦略5「福祉先進都市の実行」、政策指針11「安心して産み育てられ、子供たちが健やかに成長できるまちの実現」で子育て施策についての進め方が言及されている。おおむね10年後の東京の姿として、「結婚、妊娠や子育てに関する支援が充実し、地域で安心して子供を産み育てられ、子供たちが健やかに成長できる社会が実現している」との将来像を描いている。
さらに東京都の子育ての目標として:
・保育サービス利用児童数:2017年までに、4万人分増
・都立・公社病院における病児・病後児保育事業の実施」2015年度以降順次、病児保育等の区市町村ニーズがある小児科設置病院
・都庁内に地域に開放した保育施設の設置:2016年度、開設
・学童クラブ登録児童数:2019年度末1万2千人増
といった数値目標が並ぶ。
この数値をもとに、マネジメントを行い、子育ての問題解決が進むとは思えない(以前言及しているように)。なぜなら、実際に長期ビジョンの下位に位置づく「実施計画」レベルの指標であるからだ。
さらに本文の記述を見ていくと驚くことがある。「地域で子育て」「社会で子育て」など長期ビジョンには時代とかけ離れた言葉、現実感のない言葉が踊っている。すでに共同体は崩壊しており、「友達以外は皆風景」な地域社会。保育園の園児の声が「騒音」と地域住民に捉えられ、高齢の親が家政婦の役割を果たさないと子育てが成り立たないようなケースが相次いでいる中、「地域で子育て」など現実を見てないとしかいいようがない。
また、世論調査の住民満足度を調べてみたが、多くの自治体では住民満足度調査が行われているが、東京の世論調査ではなかなかテーマにすら上がっていない。
そこで、平成19年に発表された「子育て応援都市東京・重点戦略~社会全体で子育てを応援する東京の実現に向けて~」、平成24年度東京都福祉保健基礎調査「東京の子供と家庭」の結果を見てみよう。後者の調査は非常に参考になる。
・共働きである世帯の割合が5割を超え。1番下の子供が1歳未満の世帯では顕著に増加していること。
・平日の日中、通園させたり預けたりしている子供(2,008人)の預け先(主なところ)は子供の年齢が「0~3歳」では、「認可保育所(公立)」の割合が最も高く33.4%となっていること
・子供が生まれた後に、勤務時間の調整が必要だったのは、父親20.9%、母親48.6%
・育児休業制度を利用については、父親1.5%、母親25.4%
となっている。
言いたくなかったが、東京都の合計特殊出生率(簡単に言うと、1人の女性が一生に産む子供の平均数)は非常に低い。東京都庁の業務執行能力は非常に高いし、東京に本社を持つ企業は多いし、多くのメディアも東京で業務を行っている、財政的にも相対的に他都道府県と比較して豊かだ。そうした中で、「結果にコミット」することを期待したい。
(本記事中のリンクを見るには http://japan-indepth.jp 上でお読みください)