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.政治  投稿日:2015/1/11

[西村健]【不明瞭な東京都の「政策目標」】~東京都長期ビジョンを読み解く!その1~


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

「西村健の地方自治ウォッチング」

執筆記事プロフィール

 昨年末、「東京都長期ビジョン」が策定された。東京をどのようにしていくのかを示した「具体的な工程表」である。

「都市戦略」として、五輪の成功、インフラ整備、魅力発信などの8つから構成されている。これを読めば今後の東京がどうなるかが理解できる、とても読み応えのある内容である。世界の主要都市との比較も掲載されている。

しかし、このビジョン、何が(事項)、いつまでに(目標年次)、どのくらいまで(目標値)といった要素で構成されている「政策目標」が「ダメよ〜ダメダメ」なのだ。

全体的に見ると、様々な指標が混在している。事項「歩行者に配慮した新たな都市空間の創出」・目標値「対象地区の拡大」のように、目標とはお世辞にも言えないものも数多く存在する。なぜなら目標とは「行動を進めるにあたって、実現・達成をめざす水準」であり、たいてい数量化されたものというのがビジネス上の基本的な常識だ。

要件を満たすものを見てみても、事項「小学校通学路に防犯カメラを設置」・目標値「公立小学校全 1,296 校」のように都庁が予算をつけ、活動したことを示す指標(アウトプット指標)にしかすぎないものも多く、事項「家庭・事業所の備蓄」・目標値「実施率 100%」のように何かに働きかけた結果での指標(アウトカム指標)は少ない。ビジネスの営業活動で例えればアウトプット指標は「得意先への訪問件数」、アウトカム指標は「成約件数」と考えればイメージがつくだろうか。

つまり、この東京都長期ビジョンの目標は、政策による成果よりも、頑張った回数が目標になっているというのが実態なのだ。

個別に見ていくとさらに問題が目につく。五輪関係では、事項「観光ボランティアの活用」・目標値「3,000 人」という政策目標がある。1回でもボランテイアをすればカウントされるのか、何回・何時間か活動するという条件が必要か、そもそも都民に限定されるのか、どの期間の集計なのかなどなど、多くの疑問が浮かんでくる。そして、そもそも、なぜこの指標なのか、数値なのかを説明する根拠が見当たらない。そして、目標設定のベースとなるはずの、現時点での数値やその分析結果が示されていない。

現状は、残念ながら、政策目標における指標の選択、目標数値の設定など、全国の自治体と比較してもレベルが低いと言わざるを得ない。責任部署や責任者名が明記されている市役所さえ全国にはあるのだ。

第1章の章立てで、「「世界一の都市・東京」の実現を目指す」と固い決意が述べられている。そのためにはもっとレベルアップする必要があるだろう。

(このシリーズ、続く)

 

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