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.政治  投稿日:2016/1/15

[細川珠生]【トランプ大統領ならテロ拡大】~杏林大学名誉教授 田久保忠衛氏に聞く~


「細川珠生のモーニングトーク」2016年1月9日放送

細川珠生(政治ジャーナリスト)

Japan In-depth 編集部(Aya)

先週に引き続き、ゲストは杏林大学名誉教授の田久保忠衛氏。今年の11月に行われる米大統領選について聞いた。8年間続いたオバマ政権。次に政権をとるのは民主党か、それとも共和党か、注目されている。

アメリカの外交は、19世紀、セオドア・ルーズベルトの時代から「大きな棍棒を片手に猫なで声で交渉するのが一番いい外交」だった。軍事力という脅威を見せながら、表面的には穏便に相手と交渉する。しかし、「オバマ政権は特に第二期から、棍棒を使わなくなってしまった。」と田久保氏は指摘した。

これにより、アフリカ北部と中東では、アラブの春と呼ばれる革命が次々と起こった。チュニジア・エジプト・リビア・スーダンでは政権が退陣した。その流れを汲んだシリアでは、反対派と大統領が対立して、一般市民が犠牲になった。世界の警察たるアメリカの介入が望まれたが、オバマ政権は介入せず、ロシアが外交の主導権をとることとなった。シリアの混乱に乗じて、アルカイダやISというテロリストが入り込んできた。ISがシリアとイラクの広範囲を実効支配した結果、シリアから夥しい数の難民が欧州に入り込んできて問題になっている。難民に混じってテロリストが欧州に入り込んでテロを起こし、混乱が高まっている。

田久保氏は、オバマ政権がアフガニスタンやイラクへ侵攻したブッシュ政権に対抗する形で誕生したことを説明し、「だからオバマ政権は内向き志向。外の色々なトラブルは話し合いで(解決するように)と言っているから、そのうちにテロリストが色々なところに出てきてしまってテロを行っている。」と、オバマ外交に対し厳しい見方を示した。

ブッシュ政権の反省からオバマ氏が支持されたように、今回は共和党に期待する気持が国民の中で強いのかという質問に対し、田久保氏は肯定した。民主党で大統領候補として最有力なのは、オバマ政権で外務大臣を一期務めたヒラリー氏。「一般市民はオバマと大きく変わらないだろうと思っている。今この世界で必要なのは力ではないか。世界の警察官としての気持ちが強いのは共和党ではないか。」と田久保氏は国民の支持は共和党に傾いているとの考えを示した。

共和党には現在四人の名前が挙がっている。不動産王のトランプ氏。キューバ系アメリカ人のクルーズ氏とルビオ氏。そしてブッシュ前大統領の弟でフロリダ知事のブッシュ氏である。トランプ氏は、難民や移民に反対し、旅行者であってもイスラム教徒は入れないという声明を出している。「こんな無茶苦茶なことを言えば、移民の国家だから国民が怒るかと思ったら、人気が出た。これが問題だ。」と田久保氏は述べた。

トランプ氏の言動には驚かされるが、支持者の数は他の共和党候補の二倍。このまま独走するのか。田久保氏は「アメリカにもう一回近い将来大きなテロがあれば、トランプはこのまま行ってしまうと思う。」と懸念を示した。

フランスでは国民戦線のルペン党首が、難民も移民も反対する政策で支持を得ていることを挙げ、「ルペン氏とトランプ氏は、同じような、“民衆の不安の中で明確なことを言う指導者”が欲しいという人を吸い上げている。これは世界的な傾向ではないか。」と述べた。

仮にトランプ氏が大統領となれば、どのような影響があるのか。「トランプ氏が大統領になったとき、イギリスとアメリカの関係は悪くなる。移民や難民を入れている国はアメリカ批判をすると思う。」と述べ、さらに「(トランプ氏は)イスラム教徒と一括りにしているが、過激化は一握り。大半は穏健派。穏健派も含めて国に入れないとなると穏健派が過激派に流れるのではないか。」と述べ、むしろテロを拡散させるのでは、との懸念を示した。

細川氏は、「選挙は気持ちを落ち着かせてじっくり投票するということが大事。」と話し、田久保氏も同意した。日本人も注視し続けることが大切だ。

(この記事は、ラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2016年1月9日放送 を要約したものです)

「細川珠生のモーニングトーク」

ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分

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細川珠生公式HP http://www.cheering.net/tamao/#
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。

細川珠生

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