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.政治  投稿日:2016/3/6

市民憩いの場、「滞在型図書館」とは


ひうち優子(世田谷区議会議員)

図書館に対するニーズは時代と共に変わる社会情勢の中で多様化してきており、今後の図書館は機能別に分けた整備が必要と考える。

具体的には、図書館カウンターのようなフロー型図書館、そして東京都世田谷区でいうと、中央図書館、梅丘図書館のような拠点図書館、また図書館に行かずともネット上で本の貸出・返却ができ、本を読むことができる電子図書館である。

フロー型図書館「図書館カウンター」

以前から、本のない、予約のみの新たな形の図書館、図書館カウンターについて提案してきた。図書館カウンターとは、予約のみの図書館で、何も大きな図書館を作らなくても、駅近のちょっとしたスペースで夜遅くまで開館している、貸出・返却・取り寄せ機能に特化した図書館である。6年前から提案しており、ようやく昨年、二子玉川と三軒茶屋にオープンし、利用者の方、特に働く世代の方から大変好評だ。

田園都市線沿いに2つ整備されたので、今後は小田急線・京王線沿いの下北沢駅、また大井町線沿いの等々力駅に図書館カウンターを整備したい。そして最終的には、各駅への整備を目指したい。

拠点図書館「滞在型図書館」

区内の拠点となる16の地域図書館は、インターネットが普及する前にできた施設であり1つの図書館にすべての図書館機能をもたせるよう設計、運営されている。しかしインターネット上で資料を相互利用できる現在、機能別に、特色ある図書館づくりを検討すべきだ。

昨年、ようやく世田谷区でも、図書館に指定管理者制度が導入された。これにより、民間のノウハウを活用し、様々な形の個性的な図書館の整備が可能となる。今後の拠点図書館は、ただ本を貸出すだけでなく、例えば

・パソコンと電源、Wi-Fi、といったネット環境を整備し、閲覧席を充実させた図書館

・セミナールームやコンベンションホールといった文化施設、美術館とコラボした図書館

・カフェを併設し、飲み物(アルコールも含む)を楽しみながら本を読むことができる図書館

というように、その地域に合わせて機能別に整備し、区民が休日に時間を気にすることなく、のんびりと過ごすことができる、いわば“癒しの空間”を提供する「滞在型図書館」を目指すべきと考える。

先日、滞在型図書館である江戸川区の篠崎図書館、千葉県八千代市の中央図書館、千代田区の日比谷図書文化館を視察してきた。篠崎図書館は、もともとあった篠崎図書館を改修。「大人のための図書館」をテーマに、児童書は一切置かずターゲットを大人に絞り、夜21時30分まで開館、駅直結でカフェやセミナールームを併設している。ネット環境が整っており、Free Wi-Fiはもちろんのこと、パソコンを持ち込める閲覧席、それとは別にパソコン室もある。

八千代市の中央図書館は、ICタグをフル活用した、本のセルフ貸出・セルフ返却だ。無論、予約した本のセルフ貸し出しも出来る。閲覧席は、勉強の為のスペース、個室利用、グループ利用と役割別に配置され、中高生が学習の場としても利用している。利用者が図書館で一日過ごすことができる、まさに滞在型図書館の代表格であった。

千代田区日比谷図書文化館は、なんといっても、洗練されたカフェとダイニングが特徴的。また、コンベンションホールや一部ネットで予約もできる有料の閲覧席があり、働く世代をターゲットにした、東京の中心部の滞在型図書館であった。

そこで今後の拠点図書館について、以下の4つを提案したい。

1. Free Wi-Fiと電源を整備し、パソコンを持ち込める席と、パソコン室を整備すること。

2. セルフ貸出・返却・予約本の受け取りを可能にし、人件費を削減する為に、ICタグを導入し、フル活用すること。

3. 閲覧席を増設し、時間制、ネット予約可、有料自習室、中高生の学習室、個室、グループ使用など、様々な用途で使用できるようにすること。

4. 渋谷の森の図書室のように、飲み物を楽しみながら本を読むことができるようなカフェを併設し、憩いの空間を提供する図書館を設立すること。

また、他区ではすでに地域図書館はすべて指定管理者による運営になっている自治体も多く、中央図書館もそのようになっていく傾向がある。そうした中、現在、世田谷図書館は工事中、梅丘図書館は基本構想策定中であるが、今後、図書館建て替えの際には、民間のノウハウをできるだけ活用すべきだろう。

図書館に行かずとも本を借りられる「電子図書館」

機能別図書館の3つ目は電子図書館だ。今後、図書館の柱の1つになると考える。

電子図書館とは、電子書籍をインターネット上で貸し出す図書館で、図書館に行かずとも本を借り、iPadなどにダウンロードして読むことが可能となるものだ。蔵書スペースを気にしなくていいので、従来の図書館と比べ、はるかにたくさんの書籍を保管できる、また、本の劣化の心配もないので、古い地図や貴重な歴史資料などの保存、維持もできる、紛失や延滞防止にもなる、高齢者や障害者への配慮もできるなどのメリットがある。

一方、デメリットとしては、出版社の理解も必要で、全ての本が必ずしも電子化できるわけではないことが挙げられる。しかし、アメリカや韓国では公共図書館の約六割は電子図書館だ。又、これまでは電子書籍の提供に消極的だった大手出版社が積極姿勢に転じていることは追い風だ。

民間のシンクタンクの調べによると、電子書籍元年である2010年の市場規模は656億円、2014年は1266億円と4年で倍に伸びており、2019年には2900億円にまで成長すると予測されている。そうした中、公共図書館における不正防止のセキュリティーが整備されれば、電子図書館も今後増えていくと考える。世田谷区も千代田区のWeb図書館のように、電子書籍ならではの特徴を生かして紙媒体との役割分担を考えながら、電子図書館を開設したい。

トップ画像:中央図書館(引用 「世田谷区立図書館ビジョンの概要」よりキャプチャ)


この記事を書いた人
ひうち優子世田谷区議会議員

東京生まれ、世田谷育ち。筑波大学附属小・中・高等学校卒業。東京学芸大学 教育学部 数学選修卒業。慶應義塾大学 法学部卒業。元ミス世田谷。幼・小・中・高等学校教諭1種免許取得。行政書士。 平成19年4月世田谷区議会議員 初当選、現在2期目。区民生活委員会、環境エネルギー問題特別委員会。好きな言葉は「継続は力なり」。趣味は将棋、トレッキング(山登り)、自転車。

ひうち優子

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