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.社会  投稿日:2016/5/5

一日も早い復旧と減災力向上を 熊本地震緊急報告会


Japan In-depth 編集部(坪井映里香)

5月2日東京・港区で、日本学術会議主催「熊本地震・緊急報告会」が開催された。このシンポジウムの目的は、4月14日に発生した熊本地震の正確な情報発信と共有、異なる分野の専門家同士の学際連携を進めることだ。参加者は330名ほどで、内、50名はメディアだった。日本地震学会や地盤工学会、廃棄物資源循環学会といった、様々な分野の全17学会が熊本地震の現地調査や研究結果をそれぞれ発表した。

今回の地震は、当初気象庁も「本震」と「余震」を誤って発表したほど余震が多い。その余震の多さがさらなる被災者を生んでいるが、強い地震動があるのは局所的で、被害の大きさにかなり差があることも大きな特徴だ。

しかし、木造建築物の被害は耐震設計の想定内だという。土木学会の報告によると、熊本港や県道28号の扇の坂橋、桑鶴大橋では、損傷はあるが構造的に深刻な被害は見られなかったという。落橋防止システムや移動制限装置が作動したおかげだ。とはいえ土砂災害や脆弱な地盤の影響があり、その点で被害が大きかったことが報告された。やまぬ余震に加え、これから梅雨の時期に入る。豪雨による土砂崩れなどで被害が拡大する恐れがあるため、復旧が急がれる。

日本災害看護学会は「先遣隊」を派遣し、避難所での看護活動や、病院での「ケアをしている人のケア」といった活動を行っている。又、被災された方や支援している方がすぐに使えるような形でタイムリーに情報発信している。例えば、エコノミークラス症候群を予防する体操方法をイラスト付きで配布したり、避難所において子どもたちとどう接すると安心するのか、といった解説チラシを配ったりしている。

日本計画行政学会の山本佳世子理事は、情報における災害応急対応について、SNSの問題点を指摘。今回は東日本大震災の際に比べSNS普及率が高まったせいか、TwitterやFacebookを用いて、個人単位で物資等具体的な要求が多く書き込まれた。情報受信者がその個人にとって必要なものがわかる、というメリットがある一方、物流が回復していないとなかなか送付先に届かず、個人を支援する人が多くなると更に調整が必要になってくるため、個人単位の小規模な支援物資の送付は難しいと話していた。

今回の報告会では現地調査や研究結果が発表されたが、やはり発生してからあまり時間がたっていないせいか、いくつかの「解明すべき点」については明快な答えは出なかった。

特に、今回の熊本地震が南海トラフ地震へどのような影響を与えるかについてはわからない、というのが現実だ。確かに地震予知は簡単ではない。しかし、私たちはいつ巨大地震が発生しても対応できるよう備えることはできる。

今回のシンポジウムで、学会同士の情報共有はできた。建築物、地盤、産業、生活、地域。すべての面で何が欠けているのか、何をするべきか、課題や反省をより具体的に、明確にする。それを行政や自治体が受け、対策を実行に移す。一つ一つ知識を積み重ね、地震対策を洗練させることはできるはずだ。

一日でも早く熊本や大分をはじめとする被災地が復興することを願うが、同時に、日本の国土の更なる強靭化と、減災力の不断の向上を官民挙げて進めるべきだろう。それが地震国日本の宿命でもあり、私達一人一人の責務でもある。

トップ画像:©Japan In-depth 編集部


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