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.政治  投稿日:2021/3/23

熊谷千葉県知事誕生、手腕やいかに


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・熊谷候補が過去最高の得票数で次期千葉県知事に。

・県民党を標榜、無所属地方議員の支持で野党色打ち消し、圧勝。

・新県知事と千葉県議会最大会派自民党との関係に注目。

 

想像を超えた圧勝だった。

千葉県知事選、熊谷俊人候補が過去最高の得票数、140万9496票を獲得。対する関政幸候補は38万4723票、3.66倍もの開きだ。

今回の県議選は、自民党が推薦した関候補と、無所属の熊谷候補の一騎打ちとなった。熊谷候補は無所属を標榜するも、もともと千葉市長になったときは民主党(当時)などの推薦で当選した経緯がある。今回も「県民党」を旗印に無所属で出馬したが、実質、立憲民主党らの支援を受けた。その為、一部メディアは与野党対決と書いた。

私は、熊谷候補、関候補、共に初対面であり、今回初めて選挙前にインタビューした。先入観ゼロで取材に臨んだが、率直な感想を述べると、熊谷候補はかなり前から県知事選を見据え準備してきたことが明確に分かった。本人も取材で語っていたように、3期目になったときから県政を考えていた節がある。まあ、額面通り受け取るかは別にしても、かなり用意周到に準備してきたことは容易にうかがい知れた。なぜかというえば、県の持つ課題、それ対する処方箋を立て板に水のごとく語ったからだ。いくら熊谷氏が弁舌爽やかな政治家だとしても、付け焼き刃ではこうはいかない。こちらはあらゆる政治家のインタビューを日々行っているのだ。

対する関候補、少し驚いたのは自民党県本部に着き、職員に取材に来た旨伝えたら案内された広い会議室に彼が一人でぽつんと座っていたことだ。取材中、ずっと関候補は一人だった。県知事選を戦う自民党推薦候補である。ネットメディアだからと思ったのかなんなのか分からないが、なかなか滅多にあるシチュエーションではない。少し、関候補が気の毒になった。

そして、インタビュー開始となり、熊谷候補との対立軸を聞いた。彼は弁護士であり、3期目のベテラン県議だ。一首長とは違う自らの実績を語ったが、正直、熊谷氏の知名度に太刀打ちできるのか、不安は残った。最後にようやく熱い口調で、「給食費無償化」は自分のやりたい政策だ、と語ってくれた。地産地消にまでつなげたい、という主張は素晴らしいと思ったが、熊谷氏を倒すには少々力不足な政策かな、と感じた。

▲写真 関政幸候補 ⒸJapan In-depth編集部

選挙は生ものだ。短期決戦ではあるが、やはり知名度がものをいう。コツコツSNSで発信してきたことで全国区における知名度を築いてきた熊谷氏と、紆余曲折を経て突然担ぎ出された関候補では、最初から勝負はついていたのかもしれない。

さて、この千葉県知事選の結果をどう見るかだ。公職選挙法違反で有罪が確定した河井案里元参院議員の当選無効に伴う参院広島選挙区の再選挙(4月8日告示、25日投開票)などが注目されているが、この千葉県知事選は菅政権にとって打撃であることは間違いない。

今回熊谷候補は、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、社民党、市民ネットの県組織から支援を受けただけではなく、自民党の石井準一参議院議員や、公明党の富田茂之衆議院議員の支持も得た。自民党以外全方位の支援を得ている。一方で、無所属の水野ゆうき県議(我孫子市選出)らの応援も前面に出し、野党色を薄める事に成功した。なかなかの戦略家ではある。

加えて、菅政権のコロナ対策の迷走ぶりと相次ぐ閣僚、官僚の不祥事も追い風となった。自民党の白須賀貴樹議員(千葉13区)の非常事態宣言下の高級クラブ通いなどが週刊誌で報じられるに至って、有権者が与党に嫌気をつのらせた結果の圧勝と見ていいだろう。自民党支持層からも大量の票が熊谷候補に流れたとみられる。

元々、千葉県議会の自民党は2つの派閥に割れていた。関候補を担ぎ出した自民党県連主流派の河上茂幹事長は、21日に幹事長職を辞任する意向を示したと報じられた。

今後、関候補を推した県議会議員は、熊谷次期県知事とどう相対峙するか、覚悟を問われることになる。地方政治は二元代表制であり、東京都を始めどこの地方自治体でも見られるように、首長vs議会の構図が千葉県でも生まれるかも知れない。今後、新県知事と、関候補を支援した自民党県議らとの対立が勃発し、県政が停滞する可能性はゼロではない。

しかし、そんな対立は県民にとっては迷惑以外のなにものでもない。行政も議会も原点に立ち返り、健全に議論を戦わせ、県民の為の政治を行う。それが有権者の望みだ。

そして、選んだ新県知事が、どう千葉県を活性化させるのか。選んだ一人一人に責任あることを忘れてはならない。

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト、産業能率大学客員教授。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。


1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。


1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。


2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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