蓮舫人気にすがる民進党の苦境 長島昭久議員インタビュー
安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)
「編集長の眼」
民進党代表選(9月2日告示、15日投開票)が近づいてきた。しかし、名乗りを上げているのは執行部系の蓮舫代表代行だけ。対抗馬が中々決まらず、無投票当選の可能性まで取沙汰されている。おりしもリオ五輪真っ盛り、代表選のニュースは全く注目を集めずお寒い限りだ。そうした中、出馬を模索する長島昭久元防衛副大臣に話を聞いた。
安倍:出馬を検討されてますね?
長島:今推薦人を集めている段階です。20人はきつい、まだ半分くらいです。僕の場合、主張をとにかく旗幟鮮明にしようと。三原則。1つ目は、「民共路線の転換」、2つ目は「憲法草案」。民進党としての草案を作る。そして3つ目は、これらをやるための「人心の一新」。今までの執行部をガラッと変える。民進党ができたときに名前だけ変えて中身を変えなかったわけですよね。そして今度、このままいくと、顔だけ変えて、中身を変えないんですよ。こうなったらもうおしまいなんで。僕らとしては、最初の二つをやる体制をつくると。つまり生まれ変わるために、ほかにいないんだったら自分が出ると。しかし、今いろんな人と話してるんですけど、現状認識は共有すると。しかし、そこまであからさまに主張されると推薦まではなかなか難しいと、そういう状況ですね。
安倍:なるほど。
長島:民共路線からの脱却っていうのは、別に共産党の存在を否定してるんじゃないですよ。共産党は共産党でずっと積み上げてきた議論があるから。我々が主体性を失って共産党に利用されるような、そういう野党共闘はだめ、と。
安倍:引きずられちゃう。
長島:引きずられる。我々が自ら輝いた上であれば、いろんな選択肢があってもいいと思うんですよ。自民党の一部とやるっていうのもいいし、おおさか(維新の会)とやるでもいいし。共産党でもいいかもしれませんよ、そうなったらね。我々は今病み上がりで、体力もおぼつかないのに、共産党の杖をついて表へ出たら、そこから先ずっとこの杖がなかったら歩けなくなりますよ。今はすべて選挙対策でやってる。確固とした政権戦略があって、その道具にいろんなものを使うっていうのはわかるんだけど。政権戦略もなく、選挙戦術・選挙対策、これをやってるんですよ。もちろんこの選挙対策を重ねていって、政権にたどり着くなら文句は言わないですよ。でも全然方向が違うわけ、僕から見るとね。そこをもう一回清算しないと、リセットしないと、民進党が立ち直る道はないと私は思っておりますね。
安倍:そういう認識の人は結構いるんですか党内で。
長島:もちろんいます、今のままではよくないと。確かにそうだねと。まぁこれは自民党が公明党に依存している体質と・・・
安倍:似てますよね。
長島:似てるんですよ。ところがまぁ、別に与党を弁護するわけじゃないけど、自公っていうのは政策のすり合わせをやって連立を組んでいるんですよ。公明党と共産党ってやっぱり違いますからね、質が。綱領を見ればわかりますけど。
安倍:はい。
長島:ここをとにかく度外視して、去年の安保法制の時に、安保法案はけしからんというところで一致したんですよ。でもけしからんにもいろいろあるわけですよ。違憲だからけしからん、と言っている政党と、安倍首相のやり方は拙速だから、もうちょっとしっかり議論をしてから決めるべきだという、けしからんと。ものすごく開きがあるんですよ。ところがけしからんという一点で、後の内容はほとんど捨象して、一致しちゃったわけです。それがずうっと今日まで続いて、参議院選挙でも私は成果が出たとは思わない。選挙対策としてもいかがなものかと思っているのに、それをそのまままた都知事選挙に押し込んできたわけですよ。それでああいう方を引っ張り出してきて、とにかく有名人で、与党が割れそうだから野党が一致すれば勝てるだろうと、こういうものすごく安易なやり方だったわけですよね。
安倍:それは執行部が決めたわけで、都連が決めたんじゃないですけどね。
長島:そうなんです、そこがくやしいところでね。僕らは民進党の東京都連の役員ですから。私がツイッターで批判しても、まぁ無責任じゃないかというお叱りを受けるのは、これは甘んじて受けなければならないんですけど。その時の経緯を考えたら、我々の選択肢なしですよ。だって翌日から都知事選挙始まって、それまで候補者決められないで、後は上から降ってきたものを受けるしかないっていう。そういう風な状況だったですよね。
安倍:松原仁さんもね、がまんして・・・
長島:そうですね。彼は都連の会長として本当に我慢してやって、まぁさすがにあの投票日一日前に代表が「敵前逃亡」という形になったことには怒ってましたけどね。あの時初めてですよ。松原さんが表に立って批判したのは。
安倍:僕もあれはおおっと思いました。
長島:あれが松原さん特有の、ある種の「歌舞伎」でもあって、自分の感情を言ったというよりは、東京都連所属議員や支持者みんなの収まりがつかないから彼が言わざるを得なかったんですよ。
安倍:なるほどね。
長島:それでも黙ってたらなんなんだと、一緒だと思われちゃうからね。
安倍:さすがにね。
長島:うん、さすがに。これは僕らも想定外でしたねこのタイミングで岡田代表が辞意を表明されるとは。
安倍:なぜこのタイミングかっていうね。
長島:これはね、説明何度聞いてもわかんない。
安倍:わかんないですよね。まぁ選挙終わった後責任を取った形になるのが嫌だったんじゃないかっていうのが大方のね。
長島:見方なんだけどね。本人はそれをゲスの勘繰りだと言ってましたけどね。
安倍:そうだ、とは言わないでしょう(笑)。話戻りますけど、そういう2つね。民共路線からの脱却と、それから憲法草案策定ということについて、それからの人心一新と。「話は分かるよ、長島さん、と。けどあんまりそれを前面に出されちゃうと、やりにくい」っていう声もあるとさっきおっしゃいましたけども。それを前面に出しちゃったら推薦人に名を連ねるのはちょっとなぁ、っていうことなんですか。
長島:そうなんです。
安倍:そうすると、ちょっと言葉を変えるじゃないですけどそういう余地ってあるんですか。
長島:まぁこれは青臭いといわれるかもしれないけど、私は言い方を変えるくらいだったら、最初から手をあげる必要もないと思っています。これね、本当に難しいですよ、政治っていうのは妥協っていうのが必要で、ある程度オブラートに包んでそして権力を握ってそして実行していくと、これが一番いいと思います。しかし、私はあえて今回もともと不利な状況の中でね、僕の派閥は6人しかいませんから、20人なんか到底届かない。それでも手をあげるべきだと我々で考えたのは言うべきことを今言うと、今この党に必要なことを言うべきじゃないかと、これ、やはりあいまいにオブラートに包んでまぁどっちかましな方を応援しますみたいなことだったら、今までと変わらないじゃないかというのがあったんです。この僕らの一石に対して、どういう化学反応が起きるのかということを見てみたいと思ったし、起きないなら起きないなりに僕らも覚悟を決めなきゃいけない。
安倍:ただ、現実的なことを考えてね、こんな風にしてくれたら推薦人になるよ、という人もいると思うんですよね。だから要するに、民共転換って言っちゃうと、それはあれだからっていうね。だから、共闘のあり方の見直し、とかね。
長島:そうですね。その点については、「主体性を失った野党共闘の路線を転換する」と、こういってるんです。我々が主体性をもった野党共闘はいくらでもやっていいですよ。それはそうでしょう、政権与党は強いんだから。主体性を失った形で今のような形で、ずるずるといくのはよくないと。こういうことです。
安倍:なるほどね。
長島:このへんでかなり、まだ乗ってくれる人が増える、
安倍:もしくは「失った」と言わないで、「主体性を持った共闘路線の確立」、とするとか。
長島:なるほどね。
安倍:2番目はいいんじゃないですか。草案策定。反対の声は大きいんですか?
長島:いやぁー、これも結構抵抗感があるみたいなんです。参議院選挙で、いろんな公約があったけど民進党が一番熱心に国民に訴えたのは何ですか。3分の2阻止でしょう。
安倍:そうそう。
長島:憲法改正なんてまかりならんと言って参議院戦ってるから・・・
安倍:言っときながら。
長島:言っときながら終わって、代表選挙でじゃあ憲法改正の話に入ります。これは言えませんね、というの結構多いんですよ。
安倍:でも蓮舫さん話し合い、って言ってませんでしたか?
長島:あれはうまいこと言ってんだけど、衆参の憲法審査会の議論が始まったら粛々とそれに入ると、別に草案をつくるとも言ってないし。
安倍:ああそうか。
長島:憲法改正にコミットするとも言ってないんですよ。そう。だからそういうところを明らかにするのが代表選なんで。
安倍:ですね。同じこと言っちゃったら、何が違うのって。
長島:何が違うのってなるし。ましてや無投票で、みんな草木もなびく・・・じゃダメなんですよ。
安倍:無投票は辞めたほうがいいと思うんですよ。
長島:いやあ絶対そうなんです。前原さんと今日話しました。私は自分の主張を最後まで貫くつもりでいるんだけど、これ、みんなでにらみ合ってて結局告示の日を迎えて蓮舫さんしか出なかったら最悪だから、そこが最後はね、私利私欲を捨てて、私心を捨てて、一本にまとめて代表候補を出す、ということも自分はやぶさかじゃないと思ってるんです。
安倍:前原さんと一本化の可能性っていうのはかなりありますか?
長島:まだなんとも言えません。今日話聞いた感じでは共通する部分もかなりありますが。
編集長後記)
民進党内の勢力図は複雑だ。現時点で非主流派の候補者調整が水面下で行われているが、誰が推薦人を確保して名乗りを上げるか予測不可能だ。前原誠司元外相(凌雲会)、細野豪志元環境相(自誓会)、玉木雄一郎国対副委員長、長島昭久元防衛副大臣(国軸の会)らの名前が挙がっている。その中で細野氏は早々に不出馬を表明、主流派が推す蓮舫代表代行支持を示唆している。鍵を握るのが旧維新の党グループと大畠章宏元国交相の素交会だが、長島氏が指摘するように、各非主流派が勝ち馬に乗ろうと蓮舫氏になびくことで対抗馬が決まらず、無投票になるような事態は避けるべきだろう。
東京都知事選でも民進党は告示日直前まで候補者選びに迷走した。最終的に野党統一候補となった鳥越俊太郎氏は都の政策論争を避け、最終的に小池百合子氏に大差で敗北したばかりだ。知名度だけで候補者を選ぶとしっぺ返しにあうことは証明済みだ。
非主流派は早々に対抗馬を決め、蓮舫氏と新生民進党のかじ取りをどうしていくのか、堂々と議論すべきだろう。共産党との共闘をどうしていくのか、安倍政権が進めようとしている憲法改正にどう向き合うのか、アベノミクスに変わる経済政策を打ち出せるのか、有権者が最大野党に期待するものは大きい。ただ単に世論調査で支持率が高いと言うだけで代表を選ぶなら、民進党は長期低落の流れから逃れられないだろう。お盆も明けた。有権者の眼は厳しさを増している。
(インタビューは2016年8月15日実施)
トップ写真:長島昭久元防衛副大臣©長島昭久事務所
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。