.国際  投稿日:2017/2/24

「少女像」に拘る朝日と読売

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古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

韓国側が自国内やアメリカ各地に日本への非難をこめて建てた慰安婦像を朝日新聞や読売新聞は韓国側が好んで使う「少女像」という言葉でなお呼んでいる。日本の外務省はこの像を「慰安婦像」と呼ぶことに統一する方針をすでに発表した。だが二大新聞はあえて日本政府のその方針に逆らってみせるという形となった。

そうなると、日本政府の公式発表のなかで「慰安婦像」と呼んだ対象に対しても、その発表をねじ曲げてまで「少女像」と表記するというコメディのような事態も起きつつあるようだ。この子供っぽい「反抗」も最近の新聞研究の一端としては興味深い事例だといえる。

韓国側がソウルの日本大使館前や釜山の日本総領事館前に建てた慰安婦像は韓国の国内法にも、外交活動に関する国際条約にも違反する無法な行為の産物である。だが韓国当局はその設置を認めてきた。一昨年12月の日韓外相会談で韓国政府がその慰安婦像の撤去に努めることを約束したのは周知のとおりである。

さてこの像はまちがいなく慰安婦の像なのだが、韓国側では「少女像」と呼ぶ。日本側でも朝日新聞などは「慰安婦を象徴する『少女像』」という韓国側にすり寄った表現を使ってきた。日本の政府や国会でもたまに「少女像」と呼ぶ向きもあった。

だが日本の外務省は2月2日、この像の呼称を「慰安婦像」に統一するという方針を公表した。ところが朝日新聞も読売新聞もその後も「少女像」という呼称を続けて使い、日本政府には反対する姿勢をみせた。

2月17日には岸田外務大臣が韓国の尹外務大臣とドイツのボンで会談し、「釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像はきわめて遺憾であり、ただちに撤去を求める」ことを求めた。この経過は外務省からの「岸田外相が慰安婦像の撤去を求めた」という公式な発表となった。

岸田外相が撤去を求めたのは「慰安婦像」であり、「少女像」ではないことが日本政府の公式言明で明らかにされたわけだ。だからその言明を報道するメディアは当然、その言明で使われた呼称や名称や表現をそのまま使うのが客観報道の原則だろう。

ところが朝日新聞も読売新聞もこの外務省発表の報道では中心の用語となる「慰安婦像」という語を避けて、「少女像」という言葉を使っていた。おかしな現象である。「日本国外相が慰安婦像の撤去を求めた」と明記された公式発表について、「日本国外相が少女像の撤去を求めた」というふうに書き替えてしまうことになるからだ。

両新聞ともいまや日本の公式の用語となった「慰安婦像」という言葉を使うと、自分たちの非を認めることになるとでも、思っているのだろうか。なぜあえて公式な用語を無視してまで、韓国側からのバイアスがかかった自社用語の継続使用にこだわるのだろうか。そこになにか幼稚な意地のようなふてくされをつい感じてしまうのは私だけだろうか。

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この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト・麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「アメリカがいつまでも守ってくれると思うなよ」「危うし!日本の命運」「中・韓『反日ロビー』の実像」など多数。

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