.国際  投稿日:2017/3/29

朴槿恵大統領弾劾の黒幕浮上

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朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・「崔順実ゲート」黒幕はJTBCテレビ会長洪錫鉉氏と憶測呼ぶ。

・洪錫鉉氏、野党前代表文在寅氏と朴大統領弾劾の絵を描いたとの見方浮上。

・韓国政局、流動化の可能性も。

 

■JTBC会長洪錫鉉氏黒幕説浮上

韓国の政界では、「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」から朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾」までの流れを作った黒幕は、中央日報とケーブルテレビ“JTBCテレビ”の会長だった洪錫鉉(ホン・ソッキョン)氏だとの情報が飛び交っている。

それは洪錫鉉-朴晋均中央日報記者(JTBCの政治顧問)−JTBCニュースキャスター兼社長の孫石熙(ソン・ソッキ)のラインで、高ヨンテとTV朝鮮キム・ジェドン記者の「陰謀」を利用して朴槿恵政権崩壊の絵を描いたという説からのものだ。

この企画を弾劾にまで持っていった政治勢力は洪錫鉉−韓国最大野党「共に民主党」前代表の文在寅(ムン・ジェイン)ラインだといわれている。もしもこの全貌が今後事実によって裏付けられれば、韓国政界は再び大きく揺れ動くだろう。 

洪錫鉉氏(父:洪ジンギ元法務部長官、弟:洪ソッチョ光州元高検長)は、入院中の李健熙サムスン会長(植物人間状態と言われている)の夫人・洪羅喜(ホン・ラヒ)氏の実弟で、盧武鉉政権時代の2005年に駐米大使に抜擢され、国連事務総長の座を狙っていた人物だ。

しかし2005年の「Xファイル事件」(97年大統領候補への秘密献金を暴露された事件)で辞任を余儀なくされ、国連事務総長のポジションは潘基文(パン・ギムン)氏(前事務総長)に持っていかれた。

■洪錫鉉氏、大統領選出馬か?

政治に執着心を持つ洪錫鉉氏は、2~3年前から「統一オデッセイプログラム」を立ち上げ、「リセットコリア」、「デジタル民主主義」を主張し左右の有力メンバーを集め、政治勢力の統合を進めてきた。今回の辞任で大統領選挙に出馬するのではないかとささやかれているのもそのためだ。しかし時期的に無理があることからキングメーカーに回るのではないかと言われている。

その一方で洪錫鉉氏は、経営権継承基盤が固まらないサムスン3代目の李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)副会長を揺さぶるために「崔順実ゲート」を利用したとも噂されている。李在鎔氏逮捕では洪錫鉉氏の思惑が絡んでいたと疑われているのだ。李在鎔氏が崔順実と関わった暴露ストーリーは、洪錫鉉氏の「走狗」であるJTBCテレビの孫石熙(ソン・ソッキ)氏が進めたのは周知の事実である。

■サムソン側の反撃

しかし、李在鎔副会長が逮捕された直後から洪錫鉉氏は反撃を受けることになる。李副会長逮捕を、サムソン財閥を支配下に置こうとする洪氏一族の陰謀と睨んだからだ。そして洪錫鉉氏は3月18日に急きょ中央日報とJTBCテレビ会長職を辞するに至った。

これは実質解任と言えるものだ。この解任劇は李在鎔副会長逮捕(2月17日)直後の2月28日、サムソングループの社長級をチーム長とする「未来戦略室」が閉鎖された時点で予測されていた。

「未来戦略室」はサムスングループを束ねる司令塔で、そこにいたのはグループ企業の責任者級であった。洪錫鉉氏は一貫してその組織に関与し、オーナー一族中心の経営を支えていた。政界へのロビー活動もここで推進していたという。崔被告側への計430億ウォン(約43億円)に上るとされる贈賄容疑も、この未来戦略室が主導したとみなされている。

李在鎔副会長は、未来戦略室を閉鎖することでオーナー一家中心の経営と共に、サムスン内の洪錫鉉氏の足場も崩し、「辞任」に追いやったのだ。  

逮捕された李在鎔副会長の洪家に対する不信は家族関係にまで及んでいる。3月6日と8日には、母親でサムスン美術館「リウム」館長の洪羅喜氏と叔母で副館長の洪ラヨン氏が電撃的に相次いで辞任(解任)している。

この一連の人事は、自身を逮捕に至らしめた洪氏一族に対する李在鎔副会長の反撃の一環だと言われている。李在鎔氏と母親との葛藤は2014年から噂されており、それは今回、洪羅喜氏が息子の李在鎔氏に面会に行ったのが逮捕されてから1カ月後の3月16日だったことからその信ぴょう性を高めている。

しかし、サムソン電子側はこうした観測を全面否定している。

■孫石熙氏、信用失墜も

洪錫鉉氏の辞任によって苦しい立場に立たされているのがその「走狗」の役割を果たし、「ろうそくデモ」に火を付けた孫石熙(ソン・ソッキ)氏だ。JTBCの孫石熙氏が政治的陰謀のために「ねつ造報道」まで行ったのではとの疑惑が拡散している。そればかりか報道した「崔順実のタブレットPC」に対するねつ造疑惑も依然として根強い。

もしも洪錫鉉氏が大統領選挙に打って出るか、もしくは次期大統領のキングメーカーの役割を果たすことにでもなれば、「崔順実ゲート」報道を終始リードしてきた孫石熙(ソン・ソッキ)氏自身の公平性にも大きな疑問符がつくことになり、社会的信用を失墜してジャーナリスト生命を絶たれることになるだろうといわれている。この事態の推移いかんによっては、韓国大統領選の政治状況にも大きな変化が起こりうる。

参照記事)2017/1/15付「デマと誤報暴露で韓国世論変化

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この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)など。

朴斗鎮

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