有事の今こそ拉致被害者救出を
「細川珠生のモーニングトーク」2017年4月29日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(坪井映里香)
【まとめ】
・北朝鮮問題で国際社会の緊迫感高まる。
・有事の際の拉致被害者帰国に向け自民党が提言。
・あらゆる圧力と国際社会の包囲網が必要。
北朝鮮との緊張状態が継続する昨今、秋田県男鹿市において北朝鮮からのミサイルを想定した避難訓練が日本で初めて行われるなど、有事の際の対応を考える必要が急速に高まっている。そうした中、拉致被害者たちの安全確保や、全員帰国実現に向けての政府・与党の対応などを、自民党拉致問題対策本部長の山谷えり子参議院議員に、政治ジャーナリストの細川珠生氏が聞いた。
■緊迫感高まる国際社会
まず細川氏が北朝鮮半島情勢が緊迫し日米が共同演習をやっている中、有事の際の北朝鮮からの難民の問題を政府はどう考えているのか聞いた。これに対し山谷氏は、「秋田県男鹿市で避難訓練をやったり、内閣府が国民保護のHPを充実させたり、また報道でも伝えられていたり、国民のみなさんもどう行動したらいいか、初めて真剣に考えるようになっている。難民の問題は、総理も国会で、『どう難民を分け、施設にいってもらうか検討している』と答弁している。」と述べ、政府として対応していることを明らかにした。
次に細川氏が、現在、「有事」が現実的に迫っているのか質問すると、山谷氏は「トランプ大統領が、あらゆる選択肢がテーブルの上にあると言っていることや、中国やロシア、特に中国が本気で北朝鮮の最近の行動はいかがなものかと思い、安保理で決められた制裁を守り始めていることから、緊迫感は高まっていると思う。」と述べた。
■拉致被害者帰国の為の方策
そういった有事の場合、つまり北朝鮮が攻撃に遭う場合、まさに北朝鮮にいる拉致被害者の安全を懸念し、自民党拉致問題対策本部は4月10日、「北朝鮮による拉致被害者全員の帰国実現のための提言」を提出した。そのポイントについて細川氏は聞いた。
山谷氏は、「制裁のすり抜けは許さない」ため、「ヒト・モノ・カネの流れをさらに徹底的に管理」することが必要だとして、以下のポイントの徹底を挙げた。
・他国と情報をやり取りしながら制裁のすり抜けを防ぐこと。
・民生用の部品がミサイル関連に利用されぬよう、貨物検査の特措法の改正や外務省が政令で規制していくこと。
・「ボイス・オブ・アメリカ」や「ラジオ・フリー・アジア」など北朝鮮向けのアメリカ政府系の放送局に協力依頼すること。
・平壌に大使館がある24か国と1地域へ、有事の際に邦人保護を議員外交で頼むこと。
さらに山谷氏は、「平和安全法制が成立できているので、だいぶ整備と訓練の充実はできているが、自衛隊が北朝鮮に入ることは難しい。(邦人保護は)米・韓軍に頼まなければいけないので、その辺りは総理が緻密にやっている。」と述べ、政府として邦人保護に向けあらゆる外交的努力を行っていることを強調した。
■必要なのは対北朝鮮包囲網
次に細川氏は「拉致被害者の救出に関して、過去北朝鮮が譲歩したのは、アメリカ、あるいは世界からのプレッシャーがあった小泉元総理時代で、その時拉致被害者5人の帰国が実現できた。今この機を逃してはいけない。」と述べると共に、「今の米中露の包囲網の中で日本が拉致被害者を取り戻すためにできる交渉はどういうことか。」と聞いた。
山谷氏は、「政府はずっと対話と圧力、行動対行動という原則のもとにやってきたが、今こそ対話と圧力、圧力と対話ということだろうと思う。」と述べ、圧力が重要だとの考えを示した。
日本は北朝鮮に対し、国連の制裁に加え、拉致問題の存在があるがゆえの独自の制裁を行っている。拉致被害者の家族会・救う会は「独自制裁の部分を、拉致被害者を全員返すならば外してでも、交渉の窓口を作り実質的な2国間交渉に入ってほしい。」と訴えており、総理もそのことを聞いていると山谷氏は述べた。
また、山谷氏は、国連が拉致問題の責任者を国際刑事裁判所に訴追することを検討せよとの決議を総会に出した(2016年12月19日採択)ことや、3月の国連人権理事会で国際刑事裁判所に付託するための国際刑事専門スタッフを充実させる決議が通過したことなどを明らかにした。その上で山谷氏は、そうした「国連、国際社会の包囲網」に加え、さらに米中首脳会談を終えた「中国の出方」に着目している、と述べた。
■拉致問題を置き去りにするな
現在アメリカでも北朝鮮をテロ支援国家に再指定しようという動きがある。「そこに必ず拉致問題ということも入れて、とにかく拉致問題を置き去りにさせない圧力を作っていくということが大事だと思う。」と、述べた。
細川氏は、「北朝鮮情勢が落ち着いてしまうと拉致被害者の帰国がより難しくなるという最悪のケースもある。今、安倍外交が本当に試されている。」と述べると共に、核やミサイルの脅威だけでなく拉致問題も存在する、という情報「発信」も必要だと述べた。
山谷氏は、「連休明けにも拉致の特別委員会を参議院で動かしていきたい。総理も拉致問題の国民集会で私が司令塔となって解決をしていくと述べた。」と、拉致問題解決への決意を示した。また山谷氏は、安倍総理の外交手腕を高く評価し、総理の人脈を活かしながら解決したいとの考えを強調した。
また山谷氏は、「ブッシュ大統領が(北朝鮮を)悪の枢軸と言って北朝鮮に対して圧力を強めたときに拉致被害者5人の帰国につながった。その時と(現在は)似ている状況だ。何とか解決に向けての大きな機会としたい。」と意気込みを述べた。
細川氏は拉致被害者全員帰国へ「本当に期待している。」と述べたと同時に、「朝鮮半島有事には、私たち国民が無事でいられるようにその対応もしっかりとお願いしたい。」と述べた。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2017年4月29日放送 の要約です)
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。