[Japan In-depth学生インターン・リポート]高齢者に優しい“白河モデル”〜福島県白河市「白河会議」って何?
羽田野雅乃(上智大学4年/Japan In-Depthインターン生)
2014年1月20日、福島県白河市で「白河会議」という会合が開催された。東日本大震災が起き、課題が山積する福島。そこで「持続可能なソーシャル・ビジネス・モデルを作るために出来ること」をテーマに市民や有識者が集まり、「高齢者に優しい町づくり」についての意見交換がなされた。
今回、注目したのは、地元企業『しらかわ五葉倶楽部』の取り組みだ。ここでは、咀嚼力や嚥下力が低下した高齢者が、人生の楽しみである「食」をいつまでも楽しんで貰えるように「やわらか食」というの開発・販売を行っている。商品の「お惣菜ムース」は、ほうれん草ピーナッツ和え、ひじきの五目煮、金平ごぼうなど、多彩な味を忠実に再現し提供している。口溶けが良く、味が舌に染み込み、“やさしい”仕上がりとなっている。
また、五葉倶楽部は、地産地消型の「しらかわ・きずな農場プロジェクト」という事業展開も行っている。「世界一安全な野菜をOnly Oneの技術で福島から」をテーマに掲げ、近隣の農業生産者が生産した農産物を原材料として活用し、ムース食を製造し、近郊の介護施設等へ販売する、いわゆる「六次産業化」に取り組んでいる。白河市舟田薬師下に建設され、敷地内には工場の他にも様々な施設が設けられる。
「デイケアセンター」は、介護失業者対策施設であり、要介護者を抱えている労働者が、就労中に介護者を預託出来るシステムを提供している。いわば託児所の高齢者型であり、地域の中における支え合いを目指している。福島はクリーンエネルギーの活用を目標にしており、太陽光パネルも設けられ、循環型サイクルを作ろうとしている。取締役の川本忠さんは、「白河市初の上場企業を目指したい」と意気込む。
福島は原発事故後、放射能汚染問題による風評被害も含め様々な課題を背負っている。その中で、しらかわ五葉倶楽部という企業が地域の架け橋となり、高齢者に優しい町づくりをしていく姿は、今後の高齢化対応ビジネスモデルの一つのあり方であると感じた。
介護食市場は、20年後に2兆5000億円になると言われている【注】。高齢者用介護食は確実により身近な存在となるだろう。コンビニに高齢者食が置かれる日もそう遠くないだろう。「復興」と「高齢者に優しい街へ」という二つの目標を掲げ、手を取り合う絆や希望を垣間見ることが出来た。今後、「白河モデル」が全国に、いやアジアの各国に広がることを期待したい。
【注】平成25年2月農林水産省食料産業局「介護食品をめぐる事情について」
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【Japan In-Depth学生インターン紹介・羽田野雅乃】
1989年、愛知県名古屋市生まれ。 現在、上智大学新聞学科4年在学中。 2014年4月より、在京テレビ・キー局へ記者として就職予定。