「少数株主問題」に目を向けよ 弁護士 牛島信氏
「細川珠生のモーニングトーク」2018年3月24日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(駒ヶ嶺明日美)
【まとめ】
・非上場会社の少数株主は、株を譲渡・処分することが難しい。
・少数株主が株の買取を会社に依頼し値段が決まらない場合、裁判所がフェアな値段を付けてくれる。
・株の売買で非上場会社の内部留保が動き出せば、日本経済全体に大きなプラス。
今回のゲストは弁護士として活動する傍ら、企業小説の著書が多数ある牛島信氏。最近では昨年12月に小説『少数株主』を上梓している。題材となった少数株主が抱える問題について、政治ジャーナリストの細川珠生氏が話を聞いた。
まず、細川氏は牛島氏が「少数株主」を題材に小説を書いた経緯を聞いた。牛島氏は、「非上場会社の少数株主は、株を譲渡・処分することが非常に難しい。法律的にあまりにアンフェアな状況であり、これを改善すれば日本にとって素晴らしいことが起きるのではないかと考えた。上場会社にも少数株主は存在するが、非上場会社の少数株主を取り上げて、タイトルは『少数株主』とした。」と述べた。
次に細川氏が、非上場会社の少数株主が株を自由に売買できない背景について聞いた。牛島氏は、「理屈の上では(売買のための)きちんとしたメカニズムが法律に用意されているが、非上場の少数株を買う人が事実上いないため、現実にはなかなか実行できない。」と述べた。そして買い手が見つからない理由は「一番は『次に売ることが難しい』ため。非上場の会社の情報開示は限定されているため、高い配当が続くかどうか分からないからだ。」と説明した。
牛島氏は具体例として、「夫が作った会社だが、今は甥やその息子が経営しており、まとまったお金を作るために相談しても、株を買い取るつもりはないと言われてしまうケースや、自分の株がお金に変わることすら分かっていないケース」を挙げた。
また「実際に『財産のはずなのに、オーナー社長が買ってくれない。どうしたらいいでしょう?』という相談が結構ある。」と牛島氏は述べ、少数株主が不当な扱いを受けている現状を明らかにした。
対処法・解決策に関して牛島氏は、「まず買い手候補を探し、その人に株を譲渡したいと会社に言うと、会社は承認するか、断ることができる。しかし法律上断る場合には、会社が買い取るか、会社が第3者を指定して買い取り人にするしかない。その値段が交渉で決まらない場合は、裁判所がフェアな値段を付けてくれる。大抵の場合、裁判所がつける値段はオーナー社長が言う値段より高い。」と述べた。
牛島氏は「世の中全体にある非上場会社は約150兆円の内部留保を抱えている。株が売買されることでその一部が動き出せば、日本経済全体にとって大きなプラスになるだろう。また、オーナー株主が少数株主にも目を向け、今までより一生懸命経営をすることで、経済が回っていくという期待感もある。」と少数株の売買が、個々の企業経営の健全化、ひいては、日本経済全体を活性化することにもつながっていく、との考えを示した。
最後に細川氏は、番組のリスナーの中にも当事者がいるかもしれないとした上で、「ご本人やご家族の幸せにつながるだけでなく、社会全体、日本全体をよくすることにも貢献できる可能性がある。」と述べ、普段気づかない少数株主問題により多くの人が関心を持つことが必要だとの考えを示した。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2018年3月24日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
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細川珠生ブログ http://tamao-hosokawa.kireiblog.excite.co.jp/
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。