[磯村かのん]<大麻・規制緩和の世界的な潮流>大麻一日5gまでは購入と吸引が非刑罰化したスペイン
磯村かのん(ライター・通訳・起業家)
世界的に大麻を規制する法律が緩くなってきています。ウルグアイでは2013年12月に世界で始めて大麻の栽培が合法化され、アメリカでは今年1月にワシントン州に次いでコロラド州で嗜好用大麻が解禁となりました。欧州ではベルギー、オランダ、ポルトガル、チェコ、スイス、スペインなどで大麻の個人使用の非刑罰化が施行されています。
スペインでは2002年から非営利団体の「カナビス・ソーシャル・クラブ(CSC)」という会員制の大麻クラブが出現し、現在ではスペイン中に支店があります(注1)。スペインでは大麻を含む全てのドラッグの個人使用は「違法ではないが合法でもない」という、スペインらしい(?)曖昧な法律があるのですが、法の網をかいくぐる大麻クラブとはどういうものなのでしょうか?
取材の為にスペインのイビサ島の大麻クラブにいってみました。そのクラブは島で一番大きな街である、イビサ・タウンの外れの静かな住宅街の中にあり、入り口に「Cloud – Members Only」という看板があるマンションの一室でした。
入会するには会員の紹介とパスポートが必要で、年会費は30ユーロ(約4千円)。そして入り口で品質に応じて30ユーロから80ユーロの大麻をオーダーしてお金を払います。
スペインでは5gまでの乾燥大麻や大麻樹脂を所持することは非刑罰化されているので、ここでは1人1日5gまで購入することができます。ちなみに5gというのは5㎝x4㎝のビニール袋一杯に詰めた位の量です。
大麻クラブの中にはバーがあり、そこで好みの産地と効用の乾燥大麻や樹脂をオーダーしてその場で吸引できるようになっています。飲み物用のバーもあるので、お茶やビールを飲みながら寛げるようにもなっていました。ここでは定期的に映画鑑賞会やメンバーの親睦パーティーが開かれているそうです。
この大麻クラブはオランダの大麻カフェであるコーヒーショップのようなもので、何も驚くほどのことはなかったのですが、帰り際に受付のお姉さんがとてもフレンドリーな笑顔で、「もしコカインとか他の薬物の事で警察と問題になったらすぐに言ってね。メンバー専用の無料の弁護士がいるから。ノープロブレム。」と声をかけてきたことに驚愕しました。
専門の弁護士がいれば問題ないというわけでもないだろうに…スペインという国、こんなにいい加減だから経済も危ういんだろうなあ、と妙に納得してしましました。
日本とはあまりにも違う欧米の薬物政策。世界的に大麻の縛りが緩くなっている現実を皆さんはどう考えますか?
【注1】Cannabis Social Clubs and Associations in Spain
【参考資料】The Transnational Institute (TNI) カナビス協会「スペインのカナビス・ソーシャル・クラブ」
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