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.社会  投稿日:2014/5/8

[為末大]<やり場の無い怒り>韓国旅客船沈没事故・朴大統領はやり場の無い怒りを引き受けざるを得なかった?


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

執筆記事プロフィールWebsite

 

韓国の観光船が転覆した事件で、朴大統領が追い込まれているという。理由は政府の対応が遅れたという事らしい。確かにそれはあるだろうけれど、全ての問題を政府が管理できる訳ではない事を考えると、やり場の無い怒りをぶつける場所を引き受けざるを得なかったというのが近いのではないか。

日本も原発の問題で様々な人が責任を取った。中には本当にその人の責任かどうかよくわからない人も混じっていたように思えるけれど、でもとにかくあれだけひどい事が起きたんだから誰かは犠牲になってくれないとおさまらない空気があった。

「責任を取る」というよりも、実は儀式としての意味合いが強いのではないかと思う。とにかく人を入れ替えてリセットする。前からやっている人の方がまだましな局面でも、継続して処理をする方が責任を果たすような局面でも、とにかく一回終わらないと次が始まらない。

心理学の実験で、不当な扱いを受け怒りを抱えている人が復讐を果たそうとする時、不当にあつかった相手以外に対して復讐を果たしても気が晴れるという実験がある。人間は怒る。怒ればそれをぶつけたい。もはやぶつける相手はさほど問題ではない。

私達は「それに怒っている」のか、それとも「怒っている」のか。私達は「それを許せない」のか、それとも「許せない」のか。時に社会に怒っている人の目を覗くと、本当に怒りをぶつけたいのは親や自分自身であるように見える。もはや怒りと恨みだけが残っている。

民主主義では八つ当たりも多数派になれば正当性をもったりする。私は不当にひどい扱いを受けていると思う人が増えれば、社会に恨みと怒りが満ちる。それが革命のエネルギーなのではないかと思った。

 

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