[角谷浩一]川崎市長選挙に見る順風満帆・安倍政権の見えない敗北
角谷浩一(政治ジャーナリスト・映画評論家)
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今の勢いなら安部政権は怖いものなし。歴代政権がチャレンジしたくともできなかった集団的自衛権の解釈変更、日本版NSCの創設、秘密保護法案、憲法改正と立て続けに乗り切ろうとしている。最後は国防軍の創設まで、まさに戦後レジームからの脱却を二次内閣では実現しようとしている。
むろん法案の是非については様々な考えや価値観が混在する世の中で、政権の思うようにばかり行かないこともあるだろう。その一つが足元をすくわれた格好の27日投開票のあった川崎市長選挙だ。東京に隣接する巨大な政令指定都市は今のアベノミクスの効果を受ける可能性が高い大田区、羽田地区の再開発にも近く恩恵は計り知れない。だが、自民党神奈川県連会長で官房長官の菅義偉が応援にも入る熱の入れようで戦った、自民、公明、民主推薦の協力護送船団候補はもう一人の新顔にあっさりと負けた。
「川崎のような政令指定都市、それも東京都に川を隔てて長細い形状の行政区分は住民の求心力を得にくい。かつては美濃部都政、横浜の飛鳥田市政など京浜工業地帯の発展とともに太平洋革新ベルト地帯と呼ばれたエリアだ。自民党に議席を簡単に明け渡す文化はない」(地元組合関係者)。
しかし、今回は自公民の相乗り選挙だ。この敗北は政権には痛手なはずだ。自民県連は前のめり選挙だった。黒岩県知事まで動員していた。政界関係者が言う。「一か月前の9月30日の堺市長選挙での敗北が最初だった」。大阪維新の会共同代表の政策、大阪都構想が争点になった選挙で自民党府連が推す候補が圧勝した選挙のことだが。関係者が続ける。
「結果自民候補は勝ったが、官邸の首相・安倍晋三と菅はひそかに維新候補を支援していた。自民党内ねじれは官邸初の敗北という形で終わった。菅にとっては形の違うリベンジ戦だったが再度の敗北」。
順風満帆の政権の見えない敗北だ。
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