「政権、追い込まれる可能性ある」政治ジャーナリスト角谷浩一氏
細川珠生(政治ジャーナリスト)
「細川珠生モーニングトーク」2020年12月26日放送
Japan In-depth編集部(油井彩姫)
【まとめ】
・政府、コロナ対応で学習見られず。
・医者や学者など、専門家の意見を受け入れるべき。
・総裁選までどう乗り越えていくか、政権の手腕問われる。
今週のラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」は、2020年最後の放送。政治ジャーナリストの角谷浩一氏を招き、同じく政治ジャーナリストの細川珠生氏が、今年一年を振り返った。
細川氏は、安倍政権から菅政権へ、政権の主は変わったが、この一年のコロナ対応をどう見るか、角谷氏に聞いた。
角谷氏は、「日本流のやり方は、泥沼式の行き当たりばったり」と評し、「上半期は成功していたが後半はグダグダになった」と述べ、菅政権になってからのコロナ対策は評価しないとの考えを示した。
その元凶と言われているのが、GoToトラベルキャンペーンだ。「(コロナが)落ち着いてから、と言いながら、前倒しで始めてしまい、殆ど関係がなかった県にもどんどん増え始めている。『GoToのせいかどうかの検証はできない』と政府は言う。だが、GoToの『どこでも行っていい』という政府のお墨付きにより、国民は自由に移動している。一方で自治体の首長は『不要不急の外出はやめてくれ』と言っている。この矛盾に対して国民が大混乱になっているということは間違いない」と強調した。
それに対し細川氏が、「日本政府は学習してきていないということなのか」と尋ねると、角谷氏は「そう感じる」と答えた。
「ヨーロッパの場合はクリスマスで経済を回すために11月我慢しようということでロックダウンさせたところは各国あったが、成功したのはイギリスぐらい。フランスもドイツもあまり芳しくなくて延長が続いている。アメリカは、トランプ氏の間違った方針があったので、例にする必要はない」と各国の対応を挙げ、そのうえで、
「日本は慎重だったが、こんなことを繰り返したらお金がいくらあっても足りないと思って、今度は緊急事態もできないし、支援策も後手後手だった」。そんな中で、幾つかの問題を指摘した。
「(日本は)年配になればなるほど病院で過ごす人達が増えてくることを想定した医療制度になっている」とし、「これは日本の医療制度の弱点でもある」との見方を示した。
また、「若い人達は、お金がかかったり、不安だからという理由で病院に行かない。特にコロナだということがバレたらクビになってしまうかもしれないから隠そうという、間違った動きまで出始めた」と問題視した。
角谷氏はそこから、二つの教訓を思い出すとした。
「阪神淡路大震災の時には村山政権だったが、こういう時には司令塔が大事だと、小里貞利地震担当大臣を置いた。一方で、民主党政権の菅内閣の時は、政務三役が官僚よりもものを決めることにした為に、情報が上がってこず、情報過疎になった」。
この二つの教訓をどちらも今の政権は活かしていない、と角谷氏は指摘した。
次に細川氏は、どうすれば菅政権が軌道修正をし、国民のことを理解するようになるのか、聞いた。
「官邸に客を呼んでちょこちょこ会ってもほとんど役に立っていない」と角谷氏は述べ、「会う人数よりも、学者、医者の言うことを、もう少し政治が真面目に受け止める必要がある」と述べ、専門家の意見を傾聴すべきだとの考えを示した。
細川氏は、「GoToを止めてくれとあれほど(専門家が)言っていたのになかなかやめなかった」と政府の対応に厳しい見方を示した。
また細川氏は、「政権内、あるいは自民党内で打ち合わせができていない」と述べ、誰の責任か聞いた。
角谷氏は、「(もともと)総理の指示があれば何でも動くのが自民党だが、(今は)総理の指示よりも幹事長の指示の方が影響力が大きい。二大巨頭が了解しないと物が動かないというのは、難しいのではないか」と述べた。
そのうえで、「それを上手く捌くのが官邸スタッフ」であり、「安倍内閣の時の今井氏、小泉内閣の時の飯島氏のように、周りのスタッフがどのくらい政治の想像力を発揮できるかどうかがポイント」だとした。
細川氏は、「安倍政権末期は、国民の肌感覚とだいぶ離れていった。それを今でも引きずっている。ここが菅さんに求められていることだ」と強調した。
また細川氏が、来年衆議院選挙があることに触れると、角谷氏は、「来年は都議会議員選挙もある。横浜市長選挙も予定されている。オリンピックが予定通りあるかどうか分からないが、自民党総裁選が9月にあり、10月には任期満了して終了。秋口までどう乗り越えていくのか、二階氏と菅氏の手腕が問われるし、政権自体がどうなってしまうか分からないところまで追い込まれる可能性はある」と述べた。
細川氏は、「政権の都合ではなく、国民にとって必要なことをきちっと判断してほしい」と述べた。
最後に、角谷氏が、「ネットの人たちは面白いことを言う。『アベノマスク』もネットから出てきた。今は『ガースートラベル』または『ガースートラブル』という言葉があるようだ」と述べると、細川氏は、「やはり国民は怒っている部分があるということをきちんと受け止めて、政権運営をして欲しい」と結んだ。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2020年12月26日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
ラジオ日本HP http://www.jorf.co.jp/index.php
細川珠生公式HP https://hosokawatamao.com
細川珠生ブログ https://blog.excite.co.jp/tamaohosokawa/
トップ写真:©︎Japan In-depth編集部
あわせて読みたい
この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。