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.政治  投稿日:2013/10/6

[水野ゆうき]選挙が阻む議会の一体化~地方議会の課題~


 

水野友貴(千葉県我孫子市議会議員 )

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首長と議会が健全なる緊張関係を保つ二元代表制が原則であるはずの地方。前回の記事では地方議会の実態をせきららに書いたが、もう一つ、国政と異なることは「選挙」である。

例えば、衆議院議員選挙は小選挙区制で各地区から1人が有権者によって選ばれる。惜敗率によって2位以下も当選する可能性もある。そしてそれぞれの地区から選ばれた国会議員が国政を担う。これが国会だ。

一方地方では有権者によって議会に送り込まれた議員全員が次の選挙で敵になることになる。さらに新人が出てくるので、この争いは熾烈だ。つまり敵同士で議会を運営するというわけだ。

しかも同じ地区から何人も議員が当選するのは日常茶飯事。ここで勃発してくるのが議員同士の実績争い。「私がこの歩道橋を作りました!」「私がカーブミラーを付けました!」と地元票を確固たるものにするためにはどうしても利益誘導型に走りがちとなり、議会の中でも自分のパフォーマンスにばかり終始する議員が見受けられる。それが本来は不必要なものだったり、一部市民のエゴや選挙のためによるものであることはよくある話である。

全体を見据えずに自分の当選のためだけに議員が誘導して市民の税金を使っていることは許されるものではない。

現在、自治体の課題が山積している中、議会が一体となることが肝要であるにも関わらず、それぞれの議員が敵であるがゆえに統一することはなかなか難しい。それを議会の中に入って身をもって感じている。

本来は市民のための政治であるはずが、常に目の前にぶらさがっている選挙のために議会の中での一体化を図れないこともある。自分の選挙の実績作りのためにいわゆる与党となり、自分の地元への過大配慮の為に議員が政策を通そうとするわけだ。

地方では何かをしてもらうために議員が存在するという概念をもつ有権者が多く存在するが、そもそも地方議員の主な仕事は予算が適切に執行されているか、市長提出議案が本当に市民サービスの向上になるのかなど、市を監視・監査するチェック機能を果たすことと、議員として政策立案していくことである。議決権は議会にあるが、執行権は市長にあり、実際に執行するのは役所である。

国の場合は与党が政権を握り、国作りをしていく。地方はあくまで二元代表制であり、自治体運営は首長である。議員には執行権がないのだ。ここを有権者が履き違えているケースが多い。

我孫子市で言えば市長1:市議会議員24でようやく対等となる。

つまり、この24がまとまり、市民のことを第一に考え、市に圧力をかけたり、市をバックアップすることも必要なのだ。議員が市全体、市民のことを考え、暮らしやすい街を作り上げいくということを念頭に置き、議決をしていくことが地方議員のそもそもの役割なのだ。本当に必要なものであれば、自分の地元でなくても地域に関わらず市に要求する。不必要なものは×をする。選挙にばかり心を奪われずに市民主体の政治を行うことができれば、地方議会は発展する。ではどうすれば良いのか?

議会のことは議員によって決められる。つまり議会改革を推し進めることができるのは議員しかいないのだ。

私は市議会でも議会改革の委員会メンバーとして市民の求める議会に導くよう議会改革に取り組んでいる。議会の中で全議員が競争相手になるというこの地方議会の宿命を乗り越え、議員個人が本来の仕事内容を再確認し、意識改革をしていくことが急務である。

地方政治はローカル目線も重要であるが、市全体を見渡す大局的な視点も持ち併せていなければならない。市民も我々をしっかりと見ているのだ。そして投票という形で意思表示する。ましてやSNSが普及し、市民も政治家を可視化できる時代となった。

選挙活動にばかりご執心な議員が涙をのんできた場面を私は幾度となく見てきた。中長期的な継続性を視野に入れている真の政治家であれば、選挙に囚われない器の大きい政治をするはずなのだ。

 

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