無料会員募集中
.社会  投稿日:2014/10/6

[安倍宏行]【火山噴火予知は不可能なのか?】~有珠山噴火予知に学ぶ。日本の「減災力」を高めよ~


 安倍宏行(Japan In-depth編集長/ジャーナリスト)「編集長の眼」

執筆記事プロフィールWebsiteTwitterFacebook

 

御嶽山の噴火は大惨事になってしまった。今年は災害が多い。そのたびに、予知はできなかったのか、警報はもっと早く出せなかったのかとの議論が巻き起こる。行政は、まさかここまでの被害が出るような土石流や洪水や噴火が起きると思わなかった、と言い、専門家は、現在の科学レベルでは完全な予知は難しい、と言う。その繰り返しである。

今回の噴火で、これだけ多くの火山がありながら、火山の観測を一元的に行う国の専門機関がないことを初めて知った人も多いだろう。6日付の日本経済新聞は、火山の研究者が40人程度しかいない現実を報じている。

こうした状況下で、御嶽山の噴火は本当に予知できなかったのか。実際は、噴火の2週間以上前から数十回の火山性地震が地震計により観測されていたという。しかし、気象庁は噴火警戒レベルを1(平常)のままに据え置き、レベル2(火口周辺規制)に引き上げず、突発的な噴火活動の予知までには至らなかった、という。こうした報道に触れ、いくら計測技術が発達しても予知は不可能なのか、と思っていたら、実際に火山の噴火を予知した科学者がいる、との報道が、遅れてあった。

それが、2000年の北海道・有珠山噴火を予知し、住民避難につなげて災害を最小限に食い止めた北海道大名誉教授・岡田弘氏(地球科学)である。岡田氏は、有珠山周辺を20年以上観察して来た実績がある。徹底的に地域に密着し、現場に足を運んでいれば予知は可能だった、と述べているという。火山を抱える各地域にある大学や研究機関と行政が連携を取り、継続的に観察する体制を作る必要性を説いている。

有珠山は2万年前に洞爺湖の脇に出来、20~30年に1度は噴火する火山である。この有珠山には「洞爺湖有珠山ジオパーク」(壮瞥町・伊達市・洞爺湖町・豊浦町)があるという。2009年にユネスコが支援する世界ジオパークネットワークに、日本で初めて認定されたものだ。そのテーマが「変動する大地との共生」。2012年には遺構となっていた「旧とうやこ幼稚園」を住民たちの手で復旧させ、現在は、噴石の跡などを目の当たりにできる、生きた学びの場として重要な役割を果たしているという。

地域で防災を行う。予知の精度を上げると共に、住民が行政と一体となり、災害時どう行動したら被害を最小限に止めることが出来るのか。「減災教育」がいかに大事かを、私達はまた学んだ。

東日本大震災、広島の土砂災害、そして御嶽山の噴火。自然災害の猛威に打ち勝つために、日本の「減災力」をさらに高める努力を怠ってはならない。

 

あわせて読みたい

   [安倍宏行]【メディア災害報道に批判集中】~ネット時代の取材ガイドライン作れ~

土砂災害を防ぐ知恵を】大雨特別警報・大雨警報・洪水警報・大雨注意報・洪水注意報って何

[Japan In-depth 編集部] 【防災の日に考える~公助あっての自助・共助】

[安倍宏行]<首都直下?!と慌てる前に>生活用品の備蓄、してますか?改めて首都直下地震に備えよ

東京都でさえ今月初めての導入検討会?】災害を最小限に食い止めるタイムライン(防災行動計画)の策定を

タグ安倍宏行

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."