<東京都でさえ今月初めての導入検討会?>災害を最小限に食い止めるタイムライン(防災行動計画)の策定を
安倍宏行(ジャーナリスト)
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20日広島市北部で起きた大規模豪雨災害の被害はさらに拡大し、広島県警によると、24日現在の死者は50人、行方不明者は38人となった。
こうした災害を未然に防ぐことは不可能なのだろうか。その答えの一つに「タイムライン」の活用がある。「タイムライン」という言葉は、「防災行動計画」と訳されている。
つまり、大規模水災害の発災を前提に、住民、企業(交通機関)、自治体、政府などが共通の時間軸で対応する、「タイムライン(防災行動計画)」を策定しておき、実際に災害が起きたらそれを実践することで被害を最小限に食い止めよう、というものだ。
水災害というと山間部中心に発生しているようなイメージがあるが、そうでもない。首都東京も、実は水害に万全ではない。内閣府中央防災会議の試算によると、荒川の右岸が氾濫した場合、110平方キロメートルに渡って51万世帯が浸水、およそ1,200人(避難率40%)から2,000人(避難率0%)の死者が出るという。
多くの地下鉄も浸水して交通網はマヒし、ライフラインの復旧にもかなり時間がかかるだろう。都市機能が完全に停止して首都圏は大混乱に陥り、経済活動は大打撃を受けることになる。
こうした被害を最小限に食い止める為には、巨大台風などの上陸が予想される場合、前もって「タイムライン(防災行動計画)」に沿って対策を取ることが必要だ。
具体的には、台風上陸3日前に国交省は災害対応のための人員・機材を配備、交通機関は運航停止の可能性を、自治体は広域避難の可能性を周知する。1日半前(上陸36時間前)には広域避難を開始し、上陸10時間前くらいには終了する。その時点で交通機関の運行は停止し、浸水しても早期復旧が出来るよう施設を保全する。
こうした「タイムライン(防災行動計画)」はどの自治体にもあるべきだが、 多くの地域で水災害が頻発し死者を出しているところを見ると、作ったことがないか、あっても機能していないのではないか。
東京都では、今月21日に国交省荒川下流河川事務所が「タイムライン」の導入検討会を開いた。首都圏ではこれが初めてだというから驚く。
水災害が少しでも起きる可能性のある市町村はすぐにでも「タイムライン(防災行動計画)」を策定し、国、企業、住民を巻き込んで周知徹底させることが急務だ。その上で、それぞれが発災前にどのような行動を取らなければいけないのか、普段からシュミレーションを欠かさないことが重要だ。
水災害は他人事ではない。いつ我が身に降りかかってくるかわからない。東京の荒川が氾濫した場合を想定して作られたビデオ(注1)は一見の価値がある。また、東京都建設局は「洪水ハザードマップ」(注2)を公開している。他の自治体にもあるはずだ。
自分が住んでいるところがどれだけ浸水の危険性があるのか、知っておく必要があるだろう。その上で大雨時の避難経路を確認する、建物に浸水被害を食い止める工事を施す、など、私達がやるべきことは少なくない。
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