[安倍宏行]メニュー虚偽表示に見る企業の危機管理
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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もうここまで出揃うと笑うしかないレベルだ。「偽装ではなく、誤表示」とか、「従業員の認識不足」とか、いい訳が見苦しい。社長が辞めるべき問題かどうかは別にして、消費者の視点が全く欠けている各企業の対応には、大きな疑問符がつく。
日本企業の不祥事対応=危機管理対応はお粗末のひとことだ。まず、謝っているのか誤っていないのか分からない会見が多すぎる。その結果、企業の責任を問う声が止まず、トップが辞任せざるを得ない状況になる、という最悪の結果になることが多すぎる。
ここで、危機管理対応のステップとやらねばやらない事を順を追って記そう。
- トップが責任者である第3者委員会を設立する。
- 記者会見の目的を決める。誰が出席するか、いつやるかを決める。
- 質問によって、誰が応えるか、事前に決めておく。答える範囲も決め、記者会見に出席するメンバーで共有しておく。
【解説と説明】
①第三者の眼で不祥事の原因を分析し、企業の対応を勧告してもらう為に設立することが望ましい。後日委員会を開いても、マスコミに言われたから設置した印象を社会に与えるだけだ。
②何のために会見するのか。ひたすら非を認め謝るのか、逆に全く自分たちには非は無い、と主張するのか。そこがはっきりしないから、会見を見ている側は違和感を抱く。会見を重ねるごとに主張が変わったり、非を認めていなかったのに後に認めたりすると、その企業の信頼性は大きく傷つくことになる。
③想定質問を考え、どの質問に誰が答えるか、事前にしっかり考えておかないと、複数の人間が異なる答えをしたりして、矛盾や綻びが生じる。記者はそこを突いてくる。結果、認めたくない事を認めざるを得なくなったり、意図していない見出しが新聞に躍ったりする事になる。
こうした稚拙な危機管理対応をする企業が多いのは何故か。それはメディア対応トレーニングを受けていないからではないだろうか。企業トップは、取締役会やIRのプレゼンテーション・スキルを磨く、といった「平時のトレーニング」は勿論の事、「不祥事に対する記者会見トレーニング」も常日頃受けておくべきだろう。対象はトップのみならず、製造業なら工場長などの現場の責任者や、総務部長、製造部門長、開発部門長、人事部長、経理部長など、幹部クラスにまで広げる事が望ましい。
何故なら実際に記者の質問の矢面に立つのはそうした幹部だからだ。
企業は普段からあらゆるリスクに対応できるよう準備をしておかねばならない。それを怠り、対応を間違え、企業価値を棄損させるような事があったら、株主代表訴訟を起こされても文句はいえないだろう。
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