.政治  投稿日:2014/11/15

[清谷信一]【防衛省・高機動パワードスーツ開発は税金のムダ】~装備開発の在り方、抜本的に改めよ~

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<上写真:隊員用パワーアシスト技術/左:重装備研究用、右:高機動研究用/※1>

清谷信一(軍事ジャーナリスト)

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防衛省の技術研究本部(技本)は「隊員用パワーアシスト技術」としてパワーアシスト技術の研究を行ってきた。2015年度からこれを元に「高機動パワードスーツ」の開発に乗り出す。

このため15年度予算では「個人用の装備品を装着・携行した隊員の迅速機敏な行動を実現するための高機動パワードスーツについて研究を実施」するとして関連予算として9億円を計上している。予算が認められれば、15年度に事業者を公募することになっているが、既に受注企業は決まっているだろう。

パワードスーツとは、人体の力を増幅する外骨格型のロボットだ。軍隊用としては米仏などで開発が進められているが、いずれも兵士の脚力を強化し、より重たい荷物を背負って行動できるためのものだ。

だがこれらは既にサイバーダイン社や、パナソニックの子会社であるアクティブリンク社などの国内企業が既に実用レベルの製品を開発し、介護などの現場で既に使用されていたり、あるいは製品化間近までこぎつけている。外国では軍事志向で、国内企業は福祉や産業用を重視しているといえよう。

軍用のパワードスーツを開発するならば、始めから民間企業に呼びかけ、提案書を出させてその中から主契約社を選び、丸投げする方が余程開発コストも安くあがる(サイバーダイン社は軍事協力を行わない主義なので参加しないだろうが)。当然ながら軍用となれば民間向けよりもより過酷での使用が条件となるのでハードルは高くなるだろうが、基本的に使う技術は同じだ。

そもそも技本はそのような技術を持っていない。よく誤解されているが、技本は研究試作能力がほとんどない。ほとんどの研究はメーカーから派遣された「外人部隊」が参加し、試作は外部のメーカーに発注されて行なわれている。技本に試作を作る設備も能力もまったくない。

技本は本来その技術に暗い企業に発注することが少なくない。過去、いわゆるロボット兵器の類で開発されたヘリ型無人機は事実上富士重工が担当し、UGV(無人車輛)は日立が担当していた。これらはすべからく成功したとは言いがたい。富士重工が開発した無人ヘリはFFOS、FFRSとして実用化されて陸自が採用したが、先の大震災では一度も使用されず、FFRSは調達が打ち切られる予定だ。

またUGVも長年かけて研究されているが、目標とされる小型化が実現せず、また東日本大震災の福島第一原子炉内部の偵察でも使用されなかった。この件は非常時であり、試作といえども役にたつならば投入すべきだった。実際「試作レベル」の千葉工大のUGVが投入されている。また米国のiロボット社のUGVも投入され、事後防衛省は同社のUGVを調達している。

UAVにしてもUGVも既に世界中で多くの製品が実用化され、一部は苛烈な戦場で実戦によって性能が証明されている。防衛省・技本の研究開発は一周遅れであり、しかも開発された製品の質が低い。

これは主契約社を天下りがいる「身内」の防衛産業に仕事を振るからだ。企業は出来ないとわかっても仕事が欲しいから手を挙げる。そうして実用性の低く、コストだけは高いい装備が開発されてきた。中小企業やベンチャー企業には基本的に発注されない。そもそもどの分野にどのような企業があるかのデータベースすらない。やっと最近そのようなデータベースの構築が始まったばかりだ。仮にデータベースができてもそれを活用しなければ意味が無い。開発や装備化にあたってはその分野に強く、より効率的に開発や生産ができる企業を選定すべきだ。

そもそも陸自がこのような装備を本当に欲しているのだろうかという点も問題だ。諸外国の軍隊でこのようなパワードスーツの開発の背景には歩兵装備の重量化がある。昨今はボディアーマー、暗視装置、GPS、光学照準器、PADなど多様な装備と、それらに必要な電池なども携行する必要があり、これまで歩兵が身に付ける装備が最大24キロ程度といわれていたものが、場合によっては40キロ以上になっている。このため兵士たちへの負荷が過大となっている。この過大な負荷を解消するのがパワードスーツ導入の理由となっている。          

     パワードスーツ001+
      <高機動パワードスーツの研究(イメージ)左:島嶼部攻撃等への対応、
      右:大規模災害等への対応/※2>

だが陸自では幸か不幸か近代化が遅れており、隊員の個人装備はそれほど重たくない。それよりも充足率が低い無線機のような装備、現代戦で必要な暗視装置などの、より必要性の高い装備の調達が先だろう。そもそも予算が足りずに隊員にセーターや不燃下着などの基本的な被服の支給も出来ないのが状態だ。そのような異常な状態の解消を優先すべきだろう。

技本の研究開発はどのような装備が将来必要で、各自衛隊がそのための予算を確保できるか、というビジョン無しに行なわれることが多い。近い将来、技本は解体されて新設される防衛装備庁に吸収される予定だが、装備開発のあり方を抜本的に改める必要がある。

※1 資料提供:防衛省・技術研究本部
※2 資料提供:防衛省

 

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