無料会員募集中
.政治  投稿日:2014/11/20

[古森義久]【外交・安保を論点にしない総選挙】~中国の脅威にどう対処すべきか?~


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授) 「古森義久の内外透視」 番外 総選挙

執筆記事プロフィールBlog

 

安倍晋三首相は11月18日の記者会見で衆議院を21日に解散し、12月14日の総選挙の日程を発表した。さあ、この総選挙、「大義がない」との批判も広範にある。

確かに任期をまだ2年も残した衆議院の解散には唐突の観は否めない。なぜこの時期にあえて、という理由となると、安倍首相の公式の言明からだけでは曖昧模糊である。

だがその一方、どの総選挙でも唐突という要素はつきものだろう。それに総選挙に大義がなければならない、という議論も不自然に響く。「大義」とは辞書によれば、「重要な意義」、あるいは「人の実行すべき重大な道義」という意味だとされる。道義という要素を重視すると、どんな選挙にもその背景には道義上の理由があらねばならない、という議論にまで発展する。だが選挙に道義を、というのは、ないものねだりだろう。だから大義論にはあまり意味がないことにもなってくる。

それよりも私が気になるのは、今回の安倍首相の記者会見での総選挙宣言でも、それにともなう報道陣との質疑応答でも、日本にとっての外交や安全保障の課題がまったく出なかったことである。

どんな選挙でも「国民の信を問う」という本質の部分は変わらない。であれば、今回の選挙でも、いま日本が直面する険しい国際情勢への対応策が問われるべきだろう。国家の安全保障こそ、まさに「国民の信」を最も必要とし、「国民に問う」ことを最も迫られる課題だからだ。

だからこそ国際情勢への対応である外交政策、安保政策が総選挙の主要な論点ではなくても、議題の一角には必ず組み込まれるようにするのが政治指導者たちの責務である。

日本はいま戦後でも最も深刻な安全保障上の危機に直面している。国際規範を無視して海洋領有権の野心的な膨張を図る覇権大国の中国の脅威である。アジアの駐留米軍を圧し、やがては後退させようといわんばかりの中国の大軍拡に対し、アメリカのオバマ政権は尖閣諸島などでの有事での対日防衛誓約にどこかためらいをみせる。まさに危機なのだ。

日本は中国の脅威にどう対処すべきか。自国の領土防衛、国家防衛をどうすべきか。日米同盟をどう保つべきか。そのための防衛のための予算や態勢をどうすべきか。集団的自衛権をどう利用すべきか。そしてそうしたすべての安全保障問題の背後に広がる憲法にからむ課題をどうすべきか。

12月の総選挙でのキャンペーンでは、こうしたテーマも少しは論じられねばならない。でなければ、今回の選挙の意味はさらに希薄となるだろう。私の感想は以上である。

 

【あわせて読みたい】

[藤田正美]【与野党対立軸なき総選挙に疑問】~増税先延ばしは後世に負担送りつけるだけ~

[田村秀男]【増税見送りだけでアベノミクス蘇生は無理】~現役世代向け所得税減税が急務~

[宮家邦彦]【中国最大の安全保障と防衛フォーラム開催】~アメリカ排除したアジア安全保障の枠組みに注目~

[古森義久]【中国、対日威嚇外交の挫折】〜日本側の強硬姿勢で日中首脳会談実現へ〜


copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."