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.社会  投稿日:2014/11/21

[Japan In-depth編集部]【すべての赤ちゃんが「家庭」で育つ社会を】〜「世界こどもの日」25周年記念シンポジウム〜


Japan In-depth 編集部

(JID編集部:hina)

 

11月20日は「世界こどもの日」。今年は、国連総会で「子どもの権利条約」が採択され25年にあたる。この日、東京虎ノ門の日本財団で、子どもの社会的養護を考えるシンポジウムが開かれ、関係者など200人あまりが集まった。

日本財団と国際人権NGOであるヒューマン・ライツ・ウォッチ主催、24の関連団体の協力の下開催され、Japan In-depthチャンネルが中継した。

社会的養護とは、産みの親が育てられないなどの理由で保護者のない子どもを、公的責任のもとで社会的に養育・保護することだ。日本ではおよそ4万人、このうち9割近くが児童養護施設や乳児院などの施設で暮らす。里親のような家庭的な環境で暮らす子どもの割合は、他の先進国に比べて極めて低い。全ての子どもに家庭で暮らす権利があると謳う、「子どもの権利条約」が目指す社会とは程遠い現状だ。

主催団体のひとつ、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表で弁護士の土井香苗氏は、保護者との密接な関わりが必要な乳幼児期を施設で暮らすことにより、愛着障害などが起き、将来的に貧困層となるリスクが高まるという。その上で、「不必要な施設収容をやめ、家庭に戻れない子どもは養子縁組、復帰を目指す子どもは里親の下で育てることを原則とする社会を目指すべきだ」と主張した。

次に、「赤ちゃんポスト」こと「こうのとりのゆりかご」で知られる熊本・慈恵病院の田尻由貴子元看護部長が講演。慈恵病院では匿名での赤ちゃんの預け入れを受け入れ、7年間で101人を保護した。加えて、妊娠中から電話やメールでの相談を受けている。出産前に引き取ってくれる養親を決めることで、中絶や遺棄を防ぐ狙いだ。この取り組みで204人を特別養子縁組につなげた。慈恵病院では、分娩時に、養親が立会って産みの苦しみを共有し、生まれてすぐの赤ちゃんを抱っこすることで養子への愛着を深める取り組みを行っている。こうした事前の相談に対応するシステムを全国に広げることで、赤ちゃんの命を救い、家庭的な環境で育てる機会につなげていく必要があると訴えた。

では、赤ちゃんを家庭的環境で育てるために、今、何をすべきなのだろうか?

慈敬病院の事例のように、妊娠中の相談を強化し、予期せぬ妊娠による赤ちゃんを養子縁組へつなげることは今すぐに取り組めることだろう。

里親の開拓も必要だ。自身も里親を務めるNPO法人東京養育家庭の会 青葉絋宇理事長は、児童相談所や施設の職員の中に、「里親が安全で確実なものではない」という根強い認識があるという。また、里親には育児休職が認められず、共働きの夫婦が里親になれない現状も紹介した。こうしたニーズに対し、三重県知事鈴木英敬氏は、児童相談所に里親委託を専門とする職員を配置するとともに、里親が育児休職を取得できるよう来年にも制度改正する考えを明らかにした。こうした取り組みは他の自治体でも導入できるのではないか。

また、特別養護縁組に関する法整備や、適切な予算措置も急務だ。特別養子縁組は、原則6歳未満の子と養親を戸籍上も親子とする制度だ。家庭裁判所を経て成立すると、実親との親子関係が消滅するため、実親の同意が必要だが、戸籍上の父親と連絡がとれないなど、同意が得られないケースもままある。養親と養子のマッチングに関しても、各自治体や民間業者に任せられていて、ばらばらなのが現状だ。特別養子縁組は、現行では旧来的な家族制度を色濃く残した民法に規定されており、子どもに家庭を優先することを明記した特別養子縁組基本法の整備が求められる。

シンポジウムでは、乳児院から女の子を引き取り、特別養子縁組で育てる千葉県の夫婦も登壇した。不妊治療を5年間経験した後に、養子を迎える決意をするまでは、血のつながりの無い子を愛せるかといった不安に苛まれたという。しかし、「赤ちゃんを抱っこした瞬間に、もやもやが全て消えた」と語る。近所の人にも養子であることをオープンにしているが、今まで嫌な目にあったことは一度もなく、幸せだという。1歳8ヶ月になる女の子は、夫婦に「お父さん、お母さん」と呼びかける。女性の姿が見えなくなると「お母さん抱っこ」と泣く。誰が見ても親子の確かなつながりがあり、それは女の子の屈託のない笑顔に象徴されていた。

施設が決して悪いわけではなく、現場の職員が人手不足の中、精一杯の努力をしている。しかし、子どもにとって自分だけを見て愛情を注いでくれる「お父さん、お母さん」の存在は何物にも代え難いものだ。そして親子のつながりは、血のつながりの有無を問わず、日々の生活を共にして出来上がるものではないか。そうして出来上がったつながりは、成人してからもずっと心の拠となるはずだ。

すべての子どもに温かい家庭を。少子化が進む日本だからこそ、ひとりでも多くの子どもが温かいつながりを持てることを願ってやまない。

 

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