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.経済  投稿日:2014/12/5

[清谷信一]【いいインフレと悪いインフレ】その1~インフレで景気回復に庶民は違和感~


清谷信一(軍事ジャーナリスト)

執筆記事プロフィールWebsiteTwitter

 

 

総務省、統計局の家計調査(二人以上の世帯)平成26年(2014年)9月分速報(http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.htm)によると、消費支出は1世帯当たり 275,226円で、前年同月比 実質5.6%の減少。住居などを除く 消費支出1世帯当たり 237,685円で、前年同月比 実質5.8%の減少。勤労者世帯の実収入は1世帯当たり 421,809円で、前年同月比 実質6.0%の減少となっている。

つまり勤労者の所得も消費も約6パーセント減じていることになる。円安誘導によってコスト・プッシュ型のインフレが需要を喚起し、経済を活性化させるという安倍首相の主張はまったく実現していない。

日銀の黒田総裁は10月31日の会見で、原油安などを指して「デフレ心理からの転換が、遅れるリスクがある」とし、追加緩和に踏み切った。コスト・プッシュ型のインフレを続ければ景気がよくなると考えているのだろう。だがビジネスに現場にいる人間であれば、その発言には大きな違和感を持っているはずだ。

また円安によるコストアップが好景気を生むならば、税金を上げても同じ効果があるはずだ。消費者にとって円安で値段が3パーセント上がろうが、税金で上がろうが同じことだ。少なくとも普通の人ならばそのように考えるはずだ。

筆者はこの件について最近浜田宏一内閣参与に尋ねたことがあるが、浜田参与は、「税に関してはインフレの値上がりとは全く別で、政府が(増税分)を取っていく、社会全体として損になるというのが普通の経済学の考え方。社会全体でいえば税金を増やすと(経済の)パイが減るんです。お金が民間から政府に移る。しかし損をしても政府の財政をちゃんとしなくてはならないという観点から増税が是とされる場合もある」と説明したが、消費者は支払った値上がり分のカネが政府に入ろうが、企業に入ろうが気にしてはいない。であれば、インフレによる値上げならば消費が拡大し、増税による値上げならば消費が冷え込むという説明に、普通の人は頷けないだろう。

 

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