【教育の国際化とは?大学間で格差】~秋田国際教養大学に見られる希望~
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
私はいま秋田の国際教養大学(AIU)で毎週、講義をしている。テーマは米中関係である。学生の大多数は日本人だが、使用言語は英語というこのユニークな大学での実体験は私にも日本の教育とか国際化という課題について考えさせる貴重な機会を与えてくれる。その体験の一部を報告しよう。
すでに広く知られているように、国際教養大学は秋田県が支援する独立行政法人の公立大学として2004年に開校した。その特徴としては授業のすべてが英語、4年のうち1年間は全学生が外国に留学する、教える側の5割以上が外国籍という点などである。その後の数年間で評価を驚異的に高めたことも周知である。
ところが開設とその後の成功の主役だった学長の中嶋嶺雄氏が2013年2月に急逝し、大学全体が衝撃を受ける形となったが、後任に国際基督教大学の学長を長年、務めた鈴木典比古氏が就き、その後のAIUの運営も依然、好調な軌道を歩んでいるようだ。年に一学期とはいえ、これまで4年間、教えてきた私の実感である。
今年9月から始まった今期の私の授業は24人の学生が受講した。うちアメリカからの留学生が2人、韓国の学生が1人、残りの日本人学生もすべてほぼ全員が4年生である。みな一年間の海外留学をすでにすませ、就職が内定している。
講義はアメリカと中国の関係について、戦後の早い時期の複雑な歴史から現在のダイナミックな動きにいたるまで自分のジャーナリストとしての体験を踏まえながら、多角的に解説しようという意図である。間に短い休憩をはさんで合計3時間の講義となる。
学生の反応は毎年、感じることだが、今年もみなきわめて真剣である。私の英語での講義に正しい姿勢を保ち、耳を傾け、ときおりノートを熱心にとる。講義の内容について私が意見を求めると、それぞれがきちんと答える。アメリカ人留学生が活発に質問することもあって、クラス全体が積極的に関与している印象である。
日本人学生が複雑な国際関係について英語で自分の意見や質問への答えをためらわずに述べるというのは、いまの日本の大学では珍しいといえるだろう。それになによりも学生たちの学習への真摯な態度が顕著なのだ。
こうした感想は私自身が教えるクラスについてなのだから、身びいきのような偏見があるのかも知れない。しかし掛け値なしの率直な印象なのである。このあたりにいま欠陥や障害ばかりが指摘される日本の高等教育の国際的な側面への希望を感じるのだ。
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