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.国際  投稿日:2014/12/29

[古森義久]【中国反日キャンペーンに抗せぬ外務省】~和食・アニメの宣伝が最優先~


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

日本の外務省の対外発信は根本の発想が倒錯している。

こんな批判を述べざるを得ない実例を報告しよう。日本が外部世界に向けて発信をすることの必要性が高まってきた。日本の国家、国民としての主張を世界の他の諸国に改めて知らせる必要性である。とくに外部世界で受け入れられている日本についての認識や見解が誤っているときの日本からの対外発信はとくに緊急の不可欠性があるわけだ。こんな状況をいま強めた最大の要因は慰安婦問題についての日本への冤罪だといえよう。

朝日新聞の誤報を出発点とする「日本軍は組織的に各国女性20万人をも強制連行して、慰安婦という性奴隷にした」という日本への糾弾が国際的にはほぼ定着してしまった。いまではフィクションであり、虚構であることが確認された日本への濡れ衣である。日本は官民あげて緊急にこの虚構を正す対外発信を開始しなければならない。

慰安婦問題以外でも、中国は戦争中の日本軍による南京事件や捕虜処遇という戦争犯罪的な行動を2015年の終戦70周年を機に改めて大々的に非難するキャンペーンをすでに始めた。中国政府は日本固有の領土の尖閣諸島をも中国領だと主張する強引な宣伝を強めている。こんな領域でも日本の反論は切迫した課題なのだ。

だがわが日本国の外務省はそんな切迫した現実を無視するかのように、和食やアニメを宣伝する「対外発信」を最優先して推進しようとしているのである。 外務省はいま「戦略的対外発信の強化」の名の下に「ジャパン・ハウス(仮称)」の開設に力を注いでいる。来年度の予算で合計500億円をそのために獲得しようとする宣伝活動に着手したのだ。

外務省の発表によると、ジャパン・ハウスはロンドン、ロサンゼルス、サンパウロにまず新たに建設し、日本の文化や芸術の宣伝を主要目的とし、民間企業をも招きいれて、日本の経済や娯楽の魅力を相手国にアピールするという。

いま最優先されるべき歴史や領土についての日本国の対外発信について、外務省当局者たちは「ジャパン・ハウスを拠点として進める」と説明する。となると、ジャパン・ハウスの土地を調達し、建物を築いた後でしか慰安婦問題での日本側からの真実の主張はできないことになる。とんでもない優先順位の取り違いなのだ。

外務省には慰安婦問題などの歴史関連の課題では中国や韓国から理不尽な非難を浴びても、一切、反論も否定もせずに謝るという謝罪外交を続けてきた歴史がある。だからこの種の課題で打って出るという意識がわきにくいのだろう。そんな態度が日本の国や国民の利益をどれだけ傷つけることになるか。言をまたないだろう。

 

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