[野田万起子]【中小企業が大切にすべきは人作り】~顧客に感動を提供する「ぬくもり経営」とは~
インクグロウ株式会社 取締役会長
2015年、今年の干支は未年。「家族の安泰と平和の象徴」を意味します。この意味を中小企業経営に繋げる話を法政大学大学院教授、坂本光司先生(「日本でいちばん大切にしたい会社」著者)に聞きました。2015年の展望とあるべき中小企業経営についてがテーマでしたが、まさに今の時代の中小企業のあり方について感銘を受ける話でした。
坂本先生はこれまでに、7000社以上の中小企業のケーススタディを行っており、その研究結果では1割の会社はどんな時代でも成長し続けていると指摘しています。66年間増収増益を実現している会社、48年間売上高経常利益率が20%以下になったことが無い会社など、それらの会社に共通するのは「景気に左右されない経営」をしているということです。
外部環境がどうであろうが、自ら市場を創造していく経営こそが重要なキーワードでした。国や業界が不況だからではなく、この時代の中で、我が社はどうしていくのかを考えていかなくてはなりません。また、企業にとって不変である顧客の「感動価値」をタイムリーに提供できるかがとても重要です。そして、顧客に「感動価値」を提供するのは組織を構成する社員であります。
その「人づくり」について伺うと、大家族的経営=ぬくもり経営 という言葉が返ってきました。リーマンショックや3.11の大震災を経て、人はお金より「幸せ」を重視するようになりました。利他の心があふれる社員を育てていくこと、企業は「業績軸」ではなく「幸せ軸」を重視した経営に励んでいる企業こそがこの世の中でも成長し続けているのです。
「日本でいちばん大切にしたい会社」の著作はすでにシリーズ4作目となっていますが、日本で初めて「人を大切にする経営学会」を発足した坂本先生の元には毎日、国内外から大手企業を含めてのインタビューが行われます。それだけ「人づくり」に重きを置いた経営こそが、我が国の経済成長に直接的に結びつくことになるのでしょう。
2015年もアベノミクスは我が国の政策として続行されることとなりました。中小企業支援・地方創世は重要テーマとして推進されることとなります。年初の中小企業庁長官の年頭所感から、中小企業庁の6つの政策課題を確認しました。①被災地の中小企業・小規模事業者対策 ②地域の中小企業・小規模事業者の活性化 ③小規模事業者支援策の強化 ④イノベーションの推進 ⑤新陳代謝の促進(創業促進と事業承継や引継ぎ、廃業の円滑化) ⑥消費税転嫁対策や円安による原材料・エネルギーコストの高騰対策 となっており、いずれも日本経済を支える中小企業にとっては重要な政策課題です。
ただ、やはり国策や環境がどのようであれ、私たち中小企業経営者は「成長し続ける会社」を目指していかなくてはなりません。未を象徴する「家族の安泰と平和」とは、中小企業経営においては「社員の幸せと会社の成長」と置き換えられるのではないかと思います。最後に、2015年が皆様の会社にとって素晴らしい年となりますよう祈念申し上げます。
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