[細川珠生]【教育改革、制度設計細部を詰めよ】~次のステップは「大学入試改革」~
第二次安倍内閣発足以降の2年間で、矢継ぎ早に改革を実行してきたのは、下村博文文部科学大臣率いる教育問題であった。「第一次安倍内閣が道半ばで終わった口惜しさ」が大きな原動力であったと、私のラジオ番組(「細川珠生のモーニングトーク」1月3日放送)で大臣自身が述べたように、正にそれをエネルギーにして、「いじめ防止対策推進法」の制定、教育委員会制度改革、道徳の教科化、小学校英語教育の教科化と早期化、大学入試改革などを、実施もしくは実施の決定を行ってきた。どれもこれまで議論は十分にされながらも、それ止まりであったテーマばかりで、その点において、教育改革の実行力を大いに評価をしたい。
2015年の教育施策で特に注目すべきことは、これら大きな改革の一つひとつについて、細部の制度設計がどのようになされるのかということである。例えば、道徳や小学校での英語の教科化については、教える教員の養成を新たに始めることになる。教科ということについて明確な定義はないが、あえて言うなら、次の3点が要件とされている。①教員が専科として免許を持つ(国語や算数の教科ごとの免許と同様に)②検定教科書を使用する ③評価をする。
現在は、道徳も、小学校での英語も教科ではないため、専任の教員は養成されていない。それでも道徳については、基本的には担任が教えることになっているので、大学での教員養成課程での道徳の単位取得は必須である。
しかし、英語については、小学校の英語教員の養成課程は現在存在しないため、どの学年から教科化するにしても、まず教員養成課程を作ることから始めるという、実は気の遠くなる作業が必要であるのだ。
他教科であると、中学の専科の免許があれば、小学校でもその教科に限定して教えることは可能であるが、英語ばかりは、中学1年生に教えていたやり方をそのまま小学校の3年生に当てはめることは不可能であり、小学校での英語教員の確保については、小学校を所管する市区町村の教育委員会にとって、実はとても大きな不安となっているのである。
また、教科化する科目が増えることで、全体の授業時数の調整も課題となる。現在、小学校6年間の総授業時数は5,645時間、中学校は3,045時間であり、ゆとり教育からの脱却で平成23、24年度から1割増となっているが、私が小中学校を過ごした昭和50年代に比べるとまだ約1割少ない。
全体の授業時数を増やすのがいいのか、「総合的な学習の時間」や音楽・体育・図工・家庭科などの主要教科以外の教科との調整を行うのか、2年後とも言われている学習指導要領の改訂に向けて、今年は細部ではあるがさらに重要な議論が必要な年となる。
昨年末、中教審の答申として出された大学入試改革についても6年しか時間がない。教育は賛否が大きく分かれるテーマが多いが、最後はトップの意志の固さが必要となる。しかし議論の過程では国民は大きな関心を持たなければならない。そのつもりで1年を過ごしていきたいと思う。
筆者プロフィール
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。
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