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.政治  投稿日:2024/10/21

自民党は阪神のように負けるだろう  「政治の季節」の隙間風 その1


林信吾(作家・ジャーナリスト

林信吾の「政治の季節

 

【まとめ】

・石破茂氏は内閣総理大臣に就任してわずか8日後に解散。自民党は支持率低下の中、単独過半数維持が難しい状況。

・石破内閣の支持率は28%で、就任直後としては過去最低。

・自民党は「政治とカネ」の問題に向き合わず、同じ失敗を繰り返している。

 

 15日、衆議院議員選挙(以下、総選挙もしくは選挙)が公示され、すでに各メディアが報じた通り、1日の国会本会議で自民党の石破茂総裁が首班に指名され、第102代内閣総理大臣に就任することとなったわけだが、わずか8日後の9日には衆議院が解散した。戦後最短記録である。

 前シリーズで取り上げた自民党総裁選の過程では、衆議院の解散時期についても議論がなされたが、石破氏は「野党と議論を闘わせることが大事」であるとして、早期解散には慎重な姿勢を示していた。

 ところが蓋を開けてみれば、戦後もっとも拙速な解散総選挙に打って出たわけで、掌返しだとの批判が沸き起こったのも当然である。

 こういうことになったのは、いわゆる裏金問題で逆風に晒される中、新政権誕生の比較的支持率が高い時期(世に言うご祝儀支持率)に解総選挙を実施すれば、野党の準備も整わず、自民党は単独過半数を維持できるのではないか、という党内からの「解散圧力」に抗しきれなかったから、と見る向きが多い。

 しかし、世の中はそこまで甘くないので、10日から14日に書けて実施された各種世論調査を見ると、メディアによって数値には多少のバラツキが観られるものの、総じて自民党は大きく議席を減らす可能性が高く、単独過半数を維持するのは難しい情勢であるという。

 連立与党である公明党も、議席減は避けられそうもないとされているが、前にも述べたように、「火事は最初の5分間、選挙は最後の5分間」と言われるくらいなもので、投票率はじめ不確定な彫塑はまだまだ多い。そもそも調査に回答した人のうち半数近くは、投票先を「まだ決めていない」と答えている。

 とは言え、前述の予測を覆しそうな要素がなにひとつ見当たらない、ということも、また事実である。

 そもそも、時事通信社が17日に配信した世論調査によれば、石破内閣の支持率は28%で、就任直後に「危険水域」とされる30%台を下回るという、逆風どころではない船出となっているのだ。

 首班指名から解散まで8日間というのは戦後最短記録だが、就任直後の支持率としては、今世紀最低を更新した。どこからも「ご祝儀」は来なかった、ということらしい。

 話は変わるが、石破内閣の発足と前後して、球団史上初の連覇達成を目指していた阪神タイガーズは、終盤惜しくも巨人にかわされて、2位でシーズンを終え、続くクライマックスシリーズで3位DeNAに2連敗を喫し、連覇は夢と消えた。

 投手陣が、先発・中継ぎ・抑えといずれも充実している上、打線もシーズン終盤になって調子が上がってきていたので、短期決戦ならば勝機もあろうと考えられていたにもかかわらず、である。

 敗因はもちろん単純な話ではないだろうが、すでに大きく報じられている通り、直前に岡田彰布監督が今期限りで退任する、との話がメディアに出回り、結果的に選手のモチベーションが下がってしまったことが大きかったのだろうと、衆目が一致している。

 あの大谷翔平選手を擁するロサンゼルス・ドジャースも、ワールド・シリーズ進出を賭けたセミファイナルの緒戦を落としたが、当の大谷選手は、「後がない、という感覚は僕にはなかった。2連勝すればオーケー」と発信し、日本中の野球ファンを感動させた。

 阪神の選手たちには、そうした気概を持つことなど、望むべくもなかったのである。阪神OBの江本孟紀氏などは、「何度同じ事を繰り返すのか」と憤りを露わにした。

 どういうことかと言うと、今次の人事については、岡田監督や球団上層部の意向ではなく、親会社の「大人の事情」で、たとえ連覇を達成しても2年契約が終了した時点で退任、というのが既定の路線であった、というのだ。

 これだけでも度しがたい話であるのに、クライマックスシリーズに言わば最後の望みを掛けて臨まんとしていたタイミングで公表すべき話か、というのが江本氏はじめ球界関係者の多くから聞かれた声である。

 総選挙に話を戻して、今次の石破政権もまた、危機管理という点ではお粗末極まるとしか言いようがない。

 いわゆる裏金議員の何人かは非公認になったが、ここに至るまでも迷走ぶりがまたひどかった。総裁選への出馬を表明した時点では、「政治資金にも確定申告の義務を課す」などと勇ましかったが、旧安倍派からの反発が想以上に激しく、このままでは高市早苗候補(当時)の後塵を拝することになる、と見たのか、どんどんトーンダウンしていった。

 結局、幾人かの「裏金議員」が非公認となったが、大半が無所属で立候補して、それも当選した場合は追加公認という話が、半ば既成事実のように人口に膾炙している。首相自身、「国民の審判ほど重いものはない」などと言って、追加公認することを半ば公然と肯定しているのだ。

 その上さらに、無所属で立候補した裏金議員のうち何人かに対し、連立与党である公明党が推薦までした。なにか「大人の事情」でもあったのか。

 いずれにせよ、自民党は今に至るも「政治とカネ」の問題に真摯に向き合おうとしていない。道義的責任も説明責任も果たそうとせず、「選挙でみそぎを受ければよい」という論理が、今もまかり通っているのだ。

 私はもともと自民党支持者ではないのだが、日本の将来を憂える立場からは、どうしてもこう言わざるを得ない。「何度同じ事を繰り返すのか

(その2につづく)

トップ写真)解散する衆議院本会議で万歳する与党議員 2024年10月9日 乙京都千代田区

出典) Tomohiro Ohsumi/Getty Images




この記事を書いた人
林信吾作家・ジャーナリスト

1958年東京生まれ。神奈川大学中退。1983年より10年間、英国ロンドン在住。現地発行週刊日本語新聞の編集・発行に携わる。また『地球の歩き方・ロンドン編』の企画・執筆の中心となる。帰国後はフリーで活躍を続け、著書50冊以上。ヨーロッパ事情から政治・軍事・歴史・サッカーまで、引き出しの多さで知られる。少林寺拳法5段。

林信吾

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