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.政治  投稿日:2024/10/20

「これではジェノサイド」自民党議員から上がる悲鳴


安積明子(政治ジャーナリスト)

「安積明子の永田町通信」

【まとめ】

・時事通信の世論調査で石破茂内閣の支持率は28%と、2000年以来の最低値更新。

・自民党は安定過半数や単独過半数どころか「自公で過半数」の勝敗ラインですら怪しい。

・「これではまるでジェノサイドだ」と、自民党議員から悲鳴が上がっている。

 

八王子駅前で演説する萩生田光一元政調会長にかぶさるように、「ウラ金 2728万円 萩生田」の垂れ幕が陸橋から降ろされた。10月17日には故・安倍晋三元首相の“秘蔵っ子同志”である高市早苗前経済安全保障担当大臣が応援のために訪れ、19日には20年来の友人である松井一郎前大阪市長が大阪から駆けつけた。

有権者が裏金問題ですっかり嫌気がさしたのだろう。今回の衆院選はよほどの組織力がないかぎり、街頭演説に人が集まらないが、“有名人”を迎えての萩生田氏の演説会には、それなりの人が集まった。

もちろん陣営はこれまでになく必死な様相だ。というのも萩生田氏は今回、自民党の公認が得られていない。

だからもし小選挙区で落選することになれば、比例で復活することは叶わない。もっとも萩生田氏は民主党が政権を獲得した2009年の衆院選で落選を経験しているが、今回は「裏金議員」の批判がずっしりと響いている。さらに「八王子市内に5万票ある」と言われる創価票の離反も気になる。萩生田氏は2022年7月の参院選で、東京都選挙区から出馬した生稲晃子候補(当時)を連れて市内の旧統一教会の施設を訪問したと報じられ、創価学会を激怒させた。

自民党が未曽有の危機にある。自民党は安定過半数や単独過半数どころか、「自公で過半数」という勝敗ラインですら怪しくなっている。時事通信が10月11日から13日まで実施した世論調査では、石破茂内閣の支持率は28%と、2000年以来の最低値を更新した。9月27日の総裁選では「次期衆院選で勝てる総裁」ということで石破首相が選ばれたはずなのに、これはいったいどうしたことなのか。

焦っているのは萩生田氏のような非公認候補ばかりではない。「これではうちの比例ブロックで、自民党は大きく比例議席を減らしてしまうのではないか」――。情勢調査で「優勢」の自民党前職ですら、悲鳴を上げた。自民党が比例区の議席を減らすということは、野党の議席が増えるということだ。仮にそうなれば、この前職がこれまで圧倒的な差を付けて打ちのめしてきた相手候補が比例復活しかねない。

もし今回の選挙で相手方が議席を得たなら、独占していた選挙区における自分の立場は一気に弱くなる。それはその次の選挙にも影響するだろう。

藁にもすがりたい候補者たちは、大物政治家たちの応援を求める。中でも高市氏はひっぱりだこで、130名近くから応援依頼が寄せられた。

しかも「うちに複数回入ってくれないか」との依頼もあるが、12日間の選挙期間中で高市氏がこうしたすべての要求に応えるのは到底不可能。しかも自分の選挙も気になるところだ。

というのも、高市氏は初日の出陣式に顔を出しただけで、応援のために全国を飛び回っているが、今回の選挙では高市氏の奈良2区に日本維新の会が独自候補を擁立。維新は昨年4月の奈良県知事選で勝利しており、高市氏の保守票が削られる危険もある。要するに、応援する側も苦しい戦いを強いられるほど、自民党にとって今回の選挙は過酷であるということだ。

「これではまるでジェノサイドだ」と、ある自民党議員が悲鳴を上げた。ということは、選挙後の自民党にはペンペン草も生えないということになってしまうが、果たして――。

トップ写真:自民党本部 出典:oasis2me/GettyImages




この記事を書いた人
安積明子政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使

安積明子

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