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スポーツ  投稿日:2015/3/5

[Football EDGE 編集部]【3分でわかる、Jリーグ2ステージ制導入の裏側(1)】~「Jリーグ再建計画」より~


写真:Football EDGE

Football EDGE 編集部(取材・文)

執筆記事

なぜ、Jリーグは2ステージ制になったの? そう聞かれて、正しく答えられる人はいるだろうか。漠然と「Jリーグの収入が減ってきていて、スポンサーマ ネーを得るためにやるんだよ」と答えることはできても、具体的にどのぐらい減ってきて、どのような意図で2ステージ制を行うのかを、理解している人は少な いのではないだろうか。 答えは「Jリーグ再建計画」日本経済新聞出版社(Jリーグ前チェアマン 大東和美・Jリーグ現チェアマン村井満・編/秋元大輔・構成)につぶさに書かれている。

編集クレジットに、Jリーグの前チェアマンと現チェアマンが名を連ねていることからもわかるとおり、本書の内容は、オフィシャルな見識と判断して間違いない。それによるとJリーグは経営視点で見たときに、いくつかの問題を抱えていることになる。それが次の3つである。

(1)Jリーグへの関心度の低下

(2)入場者数の微減

(3)Jリーグの収入の減少

この3つは密接に関係がある。人々の関心が薄れることで、入場者数が減り、スポンサーがつかなくなる。結果、収入が減る。簡単にいってしまえば、そういうことだ。これらを解決するための策が『ポストシーズン制(2ステージ制)』なのだ。では、3つの問題を見ていこう。

(1)Jリーグへの関心度の低下
博 報堂の調査によると「Jリーグに 興味がある」と答えた人は、2006年に46.0%あった関心度を示す数値が2012年には30.4%まで減少しているという。同書は「プロスポーツの世 界において、世間の関心度の低下はすなわち、協賛金、放映権料、入場料といったすべての収入源に影響を及ぼすことを意味する」と警鐘を鳴らす。

(2)入場者数の微減
2008 年にはJ1の1試合平均入場者数が19,202人を記録したが、翌年には 18,985人に減少。2010年も18,428人と変わらず、東日本大震災があった2011年は15,797人と大幅に落ち込んだ。翌2012年は 17,566人と持ち直したが、2013年は17,226人、2014年は17,240人と横ばいが続く。今後も増える見込みがないことから、何らかの改 革が必要なことがわかる。

(3)Jリーグの収入の減少
同書によるとJリーグの収入の減少が、ポストシーズン制導入の決定打だったようだ。「2014年から、Jリーグ本体に最大13億円の減収予測が立ったことが導入の決断を急がせた」という。以下、長くなるが引用。

「J リーグの年間予算は約120億円。1割以上の減収という目前に迫った危機は、J クラブへの配分金や育成関連費、審判関連費の見直しを迫った。これまで配分金はJ1各クラブに年間約2億~2億5千万円、J2各クラブに約1億円配分して きた。13億円減収した場合、減額は1クラブあたりJ1で4000万円、J2で2000万円とされた。しかし、J1はまだしも、J2の中には年間4億円程 度のクラブもあり、そうしたクラブにとって2000万円もの減額を求めることは死活問題といえた」

(中略)

「また、仮に試 算通りに配分金の減額が実施されたとしても、抑えられる支出はJ1が 4000万円×18クラブ+J2が2000万円×22クラブ=11億6000万円。13億の減収に対応するには、まだあと1億4000万円足りない。試合 運営費(年間約25億円、審判関連費を含む)は固定費で削減しづらいため、クラブへの配分金を除くその他の支出に目を向けると3億8000万円程度。この 中には育成関連費やスポーツ振興費が含まれる。

育成関連費を削るとなると、年代別の大会や海外キャンプの費用などが削減対象となる。しかし、継続性が重要である育成分野において、せっかく定着している大会をやめたりしてしまえば、これまで行ってきた投資が無駄になってしまう恐れもある。

ま た、日本サッカー界全体で育成の重要性が共通認識となる中、未来を担う子どもたちに対する予算を削減することは強化の先細りを招きかねない。むしろ 2020年東京五輪に向け、削減どころかさらなる投資が必要なぐらいである」(下線部分はFootball EDGEによるもの)

余談だが、下線部分の記述に編者ならびに著者のサッカーに対する愛を感じる。育成は日本サッカー界全体で共有すべきキーワードであり、そのトップに位置するJリーグが育成をないがしろにして良いわけがない。

ポストシーズン制(2ステージ制)に対して、もやもやした気持ちを持つ人も多いと思うが、結果として得られた収入が選手の育成に費やされるのであれば、やり場のない気持ちを収める場所もみつかるのではないだろうか。

引用に戻ろう。

「こ の状況の中、2015年シーズンからのJリーグ改革プランをある程度示せれば、2014年シーズン以降も継続して支えてもらえるという確証をステークホル ダーから得ることができた。付帯的にはポストシーズン制を採用すれば、2014年度の13億円減収を回避し、さらに2015年シーズンには10億円増収す るという見込みがついた。この増収見込みの10億円を未来への投資の原資にできる。こうしたビジョンのもと、ポストシーズン制の導入を決断した、というの が大まかな背景である」

本書によると、「(当時の)大東チェアマン以下、決定を下した戦略会議の全メンバー、J1・J2実行委員会の全メン バーが1ステージ制がベストという認識で一致している」という。シーズンを通して戦い、最後にもっとも勝ち点が多いクラブが優勝の栄誉に輝く。長いシーズ ンを乗り越えた先に栄えある優勝が待っているというのは感情移入しやすく、得られるカタルシスは大きなものとなる。

それらを踏まえた上で、Jリーグの先細りを防ぐために、何らかの改革が必要だった。そして何度も議論を重ね、万策尽き果てた中で最後の希望として託されたのが『ポストシーズン制(2ステージ制)』だったのだ。

次回の更新では、『ポストシーズン制(2ステージ制)』のメリットとデメリットについて、引き続き、「Jリーグ再建計画」日本経済新聞出版社(Jリーグ前チェアマン 大東和美・Jリーグ現チェアマン村井満・編/秋元大輔・構成)から読み解いていきたい。

 

提供元:<Football EDGE>10849790_1522512774673452_699522702208334408_n


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