[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2014年1月6日-12日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
遅ればせながら新春のお慶びを申し上げる。2014年を迎えたとはいえ、還暦を過ぎた故か、残念ながら、もう昔のような興奮はない。お年玉をあげる子供や甥っ子、姪っ子たちもいなくなった。孫でもできない限り、昔のような正月はもうないのだろうか。
日本の正月は平和そのものだったが、外交・安全保障の世界には相変わらずクリスマスも正月もない。中でも筆者にとって最も大きなショックだったのはISIL(イラク・レバントのイスラム国)がイラクのファルージャを制圧したというニュースである。
ファルージャといえば、筆者にとって二度目のバグダッド勤務だった2004年春、米軍が大規模掃討作戦を行った場所、スンニー派の巣窟だ。同時期に日本人の若者三人が「人質」となったことで日本でも有名な町、あれからもうすぐ10年が経つ。
当時ファルージャは「イラクのアルカーイダ」の拠点だった。結局米軍による掃討作戦は成功せず、その後武装勢力のテロはイラク全土に広がった。そのファルージャが再びアルカーイダ系の勢力に制圧された。やはり、来るべきものが来たということだ。
「平和」という言葉を何百回唱えても、平和は来ない。誤解を恐れずに申し上げれば、「平和」とは、悪事を働く武装集団を、よりましな武装集団が、圧倒的な武力で制圧し、悪事を働けない状態にすることによって、初めて回復・維持されるものだ。
2011年末に米軍がイラクから撤退した以上、この日が来ることは覚悟していた。十分な米軍の支援を受けることができない現在のイラク軍にファルージャを制圧する能力はないからだ。当分ファルージャに「平和」が戻ってくることはないだろう。
どうしても話が中東になってしまう。だが、今週は中東以外にも重要なイベントが目白押しだ。トルコ首相訪日に続き、安倍首相のアフリカ訪問、外相、防衛相のインド、欧州訪問など、通常国会前の今は日本の首相・閣僚にとっては外国出張の書き入れ時だからだ。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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