[安倍宏行]【オランダ・リポート②】政府主催で各国のジャーナリストを集めた政策PRイベントを開催するオランダ〜世界規模の課題解決にグローバルな知恵の共有を(その②)
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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前回からリポートしているオランダの医療の現状を丸ごと取材する今回の出張は、オランダ厚生省の招きを受けてのものだ。初日、最初に訪れたのは、アムステルダムにある、VU Medical Center. VU Universityが運営するオランダ最大級の病院に属する、医療研究機関である。
まず紹介されたのは、PET/MRI装置である。これはPET(陽電子放射断層撮影)装置とMRI(磁気共鳴画像診断)装置を融合させたもので、フィリップス社とシーメンス社が共同で開発している。その特徴は、従来のPET/CT装置に比べ低被ばくであり、2つの装置による検査のため移動させる必要がないため患者の負担が少ない、かつ精度の高い画像診断が短時間で出来るなどのメリットがあるという。世界の医療機関が実用に向けてしのぎを削っているが、ここのプロジェクトもまだ試用段階であるが、5年以内の実用化を目指しているという。
同センターは18の研究部門から成り、プロジェクト・リーダーは30人超、Ph.D.(博士課程)の学生135人を擁する。今回は主に心臓疾患に関する研究者がプレゼンテーションを行った。心臓疾患には様々な種類がある。遺伝子と疾患の関係はまだ解明されていないが、血液の周りの脂肪が血管と血流に影響を及ぼすとの研究成果があるという。やはり肥満は心臓疾患を引き起こす大きな要因であるようだ。ここでも普段の食生活や適度な運動、間違ったダイエットの排除など、自治体レベルでの正しい教育の必要性が指摘されていた。
日本でのメタボ検診などあるわけだが、どれだけ肥満が心臓に影響を及ぼすか、十分な啓発が行われているとは言い難い。公的機関もさることながら、メディアの役割も大きいといえるが、そもそもジャーナリストが最も不健康な生活をしているのだから何をかいわんやだ。
さて、次に訪れたのはアムステルダム南のニーウェガインにあるSt. Antonio病院。ここではペースメーカーやICDの埋め込み手術や、ステントグラフト(stent graf)内挿術の実例を見学した。
ステントとは金属製の網状のチューブで狭くなった心臓の血管を広げ、血流をよくするものだ。年間300例以上手術が行われているというが、局部麻酔で医師と話しながら手術を受ける患者をガラス越しに見学しながら、心臓疾患が日常の病気となっていること、その予防が、医療費削減のためにも全世界的にきわめて重要なことを改めて認識した一日だった。
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