[野田万起子]2013年のヒット商品から見えること〜価格ではなく品質や機能を重視した「日本人としての誇りを取り戻す」商品やサービスが好調
野田万起子(インクグロウ株式会社 代表取締役社長)
いよいよ、2013年も終わりに差し掛かり「本当に1年が過ぎるのは早いもの」という年末のご挨拶の時期となりました。先般、佐賀県は武雄で講演をする機会をいただきました。「儲かりそうな話」というテーマをいただき悩んだ末に2013年のヒット商品を振り返ってみることにしました。今回は人に焦点を当てた話ではなく、商品・コンテンツを取り上げ、アベノミクス効果とヒットに見る傾向を考えてみたいと思います。
まず、安倍政権に代わり、今年に入ってからの効果は個人消費に顕著に表れたようです。日経平均の推移は、1月4日の10,602円から、12月11日現在で15,515円となりました。2014年には20,000円代となる見方も出ています。5月の日本百貨店調べでは、東京都内百貨店売上げが総額1,240億円となり前年同月比5.1%伸びたようです。主力の衣料品が6.9%増、美術・宝飾・貴金属等の高額商品が5カ月連続で二桁増。特に宝飾・時計は50~100万円の価格帯を中心に依然底堅く動いており、100万円を超える高額帯にも動きがみられました。
何だか実感できない数字ですが、より身近なヒット商品となると、某コンビニから誕生した2つのヒット商品が挙げられます。一つがドリップ式の100円コーヒー。他のコーヒー市場に衝撃を与える商品となりました。一方で、5枚250円、2枚125円の価格は高いが高品質の食パンが売れ、本家のパンメーカーが追随するという逆転構造が生じました。IT機器はパソコンからタブレットの時代へと突入し、7インチタイプが主流、2014年にはパソコンの出荷台数を凌ぐという予測が出ています。
白物家電では、熱と空気で揚げる揚げ物調理器ノンフライヤーが、健康志向・時短志向のニーズにマッチし、12月末まで5万台の見込みに対して、9月末までに20万台を販売したそうです。
異例のヒットとなったのはTVドラマ2作。どちらも流行語大賞に選ばれるなど、原作やDVD、関連商品の売上も拡大し、ロケ地に観光客が押し寄せています。そして、何といっても日本が世界に誇れる「選ばれたもの」は、世界遺産となった富士山と、2020年開催地となった東京オリンピック、日本の「お・も・て・な・し」が認められた結果となりました。加えて国内では、伊勢神宮と出雲大社が60年に一度のタイミングで行われる遷宮を迎え、こちらも地域においては大きな経済効果が波及しました。
このように、2013年のヒット商品・コンテンツを振り返ってみますと、価格に関係なく、品質や機能を重視した商品・サービス、あるいは、日本人としての誇りを取り戻すものが大きく支持を得られたように思います。
2014年も日本の「新価値」の発見となるような商品・サービス・コンテンツが、経済活動において、景気において、更なる息吹を投入してくれるよう願います。
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【プロフィール】
野田万起子(のだ・まきこ)インクグロウ株式会社 代表取締役社長、公益社団法人経済同友会、正会員 一般社団法人日本展示会協会 理事
昭和45年8月、静岡県生まれ。東京国際大学 経済学部卒。米国オレゴン州TIUアメリカ校卒。 平成5年、株式会社ベンチャー・リンク入社、平成16年 同社(東証一部上場)執行役員に就任。平成22年 同社取締役に就任。平成23年 インクグロウ株式会社 代表取締役社長に就任(現職) 金融業界分野で20年以上、全国の地域金融機関への支援業務に携わる。地域金融機関と一緒に、中小企業の活性化に向けたビジネスマッチングの取り組みを中心に、取引先の経営相談から、金融機関の職員研修など幅広く行う。