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.政治  投稿日:2016/8/3

都知事選、鳥越候補惨敗 迫られる野党共闘


山田厚俊(ジャーナリスト)

「今回の都知事選で、“既成政党はノー”という民意がはっきりしたんだと思います」ある選挙プランナーは、小池百合子氏圧勝の感想をこう漏らした。

振り返ってみれば、先の参院選は大方の予想を裏切り、自民党は単独過半数に1議席足りない56議席だった。以前から、自民党や安倍晋三政権に対しては“消極的な支持”との調査結果が何度も示されてきた。消極的な支持とは、「本当は支持したくないけど、野党よりかマシ」との声だ。民主党政権ショックが未だ尾を引いているといっていい。そこで、野党が共闘し、統一候補を立てて臨んだものの、そううまくはいかなかった。元衆院議員の一人はこう語っていた。

「比例で統一名簿を作れなかったのが、全ての原因。一人区で統一候補を立てておきながら、比例は○○党へって足の引っ張り合いをしてたんじゃ、野合にしか見えない」

それでも、参院選において野党共闘の道筋は付けたかのように見えた。しかし、都知事選ではあまりにも無様な格好で、またも野党共闘は見直しを迫られてしまったのではないか。

都知事選で野党は鳥越俊太郎氏を統一候補に立てたものの、戦術や戦略は一切見えなかった。民進党支持層の約3割、共産党支持層の約2割が、小池氏に投票した事実を考えると、候補者選びとともに、政策協定や都民目線の確認をしっかりしなかったことが最大の敗因だと言えるのではないか。言い換えると、著名人の後出しじゃんけんさえすれば勝てる、という甘い読みだけを頼りにしていた感がある。

都知事選の票の流れを見る限り、巨大政党の自民党にたった一人で立ち向かう小池さんを応援するといった至極単純な図式で皆、投票したかのようだ。しかし、これは元々、今の自民党は嫌だよね、と思っていた有権者の受け皿になったといっていい。翻って、頼りない野党はやっぱりダメ!という声にも他ならない。

劇場型選挙で291万余票を獲得した小池氏は、反権力の強いリーダーシップを持った女性と認知されたのだ。ある意味、大阪で橋下徹氏が府知事に当選した時と同じ構図が見えてくる。今後、都庁を舞台にどう政治が転換していくのか。与野党ともに既成政党は、それぞれ反省した上で今後の選挙戦略、政党指針を打ち出さなければ、同じ轍を踏むことになるだろう。


この記事を書いた人
山田厚俊ジャーナリスト

1961年、栃木県生れ。東京工芸大学短期大学部卒業後、建設業界紙、タウン紙の記者を経て95年4月、元大阪読売社会部長の黒田清氏が代表を務める「黒田ジャーナル」に入社。阪神・淡路大震災の取材に加わる。震災取材後、事務所から出向する形でテレビ制作に携わる。黒田氏死去後、大谷昭宏事務所に転籍。2002年から週刊誌で活動を始める。2009年2月、大谷昭宏事務所を退社。フリー活動を開始。週刊誌をはじめ、ビジネス誌、月刊誌で執筆活動中。

山田厚俊

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