東京都副知事も選択肢の一つ 若狭勝衆議院議員インタビュー その1
安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)
「編集長の眼」
安倍:都知事選、小池さんが新都知事となり、若狭さんの功績は非常に大きかったと思ってます。演説もすばらしかったですね。
若狭:非常に。若狭コールも頂いて。
安倍:若狭さんが見たかったんだよーという人も多かったですね。
若狭:感動ですね。
安倍:女性初の都知事ということで・・・さて、自民党の都連のHPから名前と写真が消された、と?
若狭:そうなんですよ、東京都連のHP所属の国会議員の顔と名前がずーっと掲げられているんですが、私の名前と写真が消されてると、
安倍:消されてる?
若狭:うちの事務所にも一般のひとから電話がかかってきて。
安倍:ないぞと
若狭:除名になっちゃったの?と
安倍:いやいや、除名になるべき人は他にいるのではないんですかね・・・(笑)
若狭:おそらく、そうとう私の存在自体が憎いというふうに思っている人が一部いるんだろうとは思うんですけどね。
安倍:一部ということですかね、小池新都知事の初登庁のときに、出迎えにこなかったと。
若狭:そうですね、本来慣例でエントランスのところに、自民党の都連の主要幹部は少なくとも来ると、これまでは行われてきてたのですが、今回一応それを前提に要請はしたんですが、その要請を自民党の東京の都側がそれを拒否した、というんで、それがなかったわけですけれどね、出迎えが。
ホストに対して、礼を尽くすのが必要だと思うんですよね。ホストにいる人間が確かに憎くても、ホスト自体っていうものに対して敬意を払うと。例えば我々も裁判官にはですね、その裁判官は個人的にはいけ好かない裁判官であったとしても、法廷にあったら、一応ここに立って挨拶をする。それはポストに対してなんですよね。だからポストに対して敬意を払うということが、まぁ社会的にはある意味必要だと思うのですけれども。
安倍:それは当然ですよね、新都知事なんだから、二元代表制、いくら有権者から選ばれているといっても・・・
若狭:それはやっぱり
安倍:それは一般の人から見てもいかにも子供じみた、いじめかと。いかがなものかと思いますね。リスクマネージメントの観点からいって、そういうことをしてもリスクが増えて自らの評判を毀損することになるとおもうんですが。小池新都知事、議会とガチンコになりそうな感じですかね?
若狭:そうですね、普通は時が経つに従って、だんだん気持ちがトーンダウンしてくることが、普通はあり得るんです。ですから、このままトーンダウンしていくのか、あるいはこのテンションでずっと推移してしまうのか、もう少し様子を見る必要はあると思います。
安倍:まぁ確かに、選挙が終わったばっかりですからね。
若狭:(抵抗勢力は)たぶん都連の一部であると思うんです。HPから私の名前と写真が削除されたことについても、今日都連の本会議員の幹部の人にその話をしたら、「えっ!なんじゃそりゃっ!」て。
安倍:あぁ知らなかった・・・
若狭:それは大問題でしょうと。そんな名前と写真を削除するなんて、誰がどういう権限でやっているのかって話ですよね。
安倍:まぁ確かに、ブラックボックスですよね。
若狭:おっしゃる通りなんですよ、ですから一事が万事なんですよ。都連も誰がどういう形で、そういうやってはいけないことを平気でやってる、だれがどういう形でやっているのか、どういう権限に基づいてやっているのか。それが全く分からない、という意味合いにおいてはブラックボックスなんですよね。
安倍:ちょっと普通の組織では考えられない。民間の企業でもあり得ないし。ブラックボックスという言葉では単純に片付けられないような陰湿なものがあるのでは。と思います。ただし今回の都知事選でこういう問題が表面化したというか、大衆の耳目に触れるようになったのはいいことなのでは?
若狭:私はある意味、自民党の東京都連に生まれ変わってほしい、そういう思いを込めて批判しているんですが、もう一つ申し上げると、私は東京都連の会議においては、最初から徹頭徹尾、小池百合子さんが都知事になるのが望ましいと言う意見を言っていた。
安倍:仰っていた訳ですよね。
若狭:他の人は全員増田さん、と。ある時、(自民党都連の)会議で増田さんを支援することで、みなさん賛成ですか、賛成する人は手を挙げてください、という場面がありまして。で他の人はみんな手を挙げたんですけれども、でも私は手を挙げなかった。だから私は少数意見、一人だったかもしれませんけれども、その状況にありながらも、東京都連が文章を作って、そこには全会一致で増田氏を支援することに決まりました、というものを東京都の自民党の党員全員に手紙で配布してるんです。郵送してるんです。
これはですね、わたし本当によくよく猛省を促したいんですけれども、自民党、都連には。こういう少数意見、あるいは一人の意見というのを、封じ込めるということは極めて危険な兆候なんです。ある意味、少数意見があることによって、いろんな不正とかそういうものが表沙汰になるという、ひとつの契機になる。
例えば企業不祥事が、長らく隠蔽が続いて表に出ないことがありますけれども、取締役会の議事録か何かで、少数意見がきちんと載せられていれば、誰かが気づいて、いろいろと大きく問題になる契機となる。それが全員一致とか、全会一致とか記載されてしまうと、闇に葬られちゃう。
安倍:なかったことになってしまう。
若狭:それが企業不祥事が長らく、公にならない一つの遠因だと思うんですよね。だから、そういうのは今の現代社会において一番悪いこと。あってはならない。
安倍:今企業はコンプラとかスチュワードシップとか、で、どんどん企業は変わろうとしてますよね。政治の世界ではどうなんでしょう?
若狭:政治の世界ではもとより、本来そういうことが必要だと思うんですが、それがまさしく今回は、見事に私の少数意見が抹殺されたと、封じ込められたと。
それも誰がどういう形でしているのかっていうのがよく分からないんですよね。たぶん、自分はそういうことしていない、その全会一致も、若狭の意見を封じ込めるつもりはなかった、というふうにいう人が結構いると思うんです。
安倍:言っちゃったもん勝ちですからね。
若狭:で、そういうことで一時は万事ということでブラックボックス、誰がどういう風にやって決めて、コンプライアンス違反みたいなことを平気でやってしまうのか、ていうことが、今非常に良い例、実例としてある。
安倍:7月11日でしたよねBSフジのプライムニュースで都連の会合で満場一致だった、という下村博文さんの発言があったわけですよね。で、それに対して若狭さんはびっくりされたわけでしょ?「俺、手を挙げなかったけど?」という。下手したら侮辱罪とか名誉毀損とかにあたるとおっしゃってましたよね。
若狭:少なくとも、私も傷つくわけですから、慰謝料とか請求する裁判をおこせば、おこせることにはなると思う。
安倍:まぁ言ってみれば、政治家として、自分の信条にのっとった行動を封殺されたということですよね。でもそういうことが日常的に行われているとなると、政治家に対する不信感も有権者の間に広まってしまうし、こんなことはあってはいけないという思いはありますか?
若狭:いや、すごくありますね。これは本当に、政治に対してそれをやり出したら、ほとんど他のどっかの国みたいなもので、全く信用がなくなりますから。やっぱり少数意見というのは最高裁判所の判決も、少数意見というのは反対意見も含めて、載せられるんですよね。そういう少数意見もあるんだな、でも多数決ではこっちに決まったというようなことが、多数決の本当の姿だと思うんですよね。
安倍:なるほど。
若狭:ある意味、多数決のあり方として、よく言われているのは全会一致の決議は無効であると言われていることがありまして、全会一致の多数決決議というのはどこかしらで、少数意見が封じ込められているとか、圧力がかかったりとか、そういうことがあるので、全会一致の決議の時はよくよく注意して、見ていかなければなりませんよ、という一つの多数決原理の指針という言葉があるんですよ。
安倍:むしろそういう時こそ、注意して見なきゃいけないよと。
若狭:ですから、今回全会一致というようなことは、私の少数意見が封じ込められたということですから、全会一致の決議の時にはよく注意しましょうよ、というのがまさに実例として今回現れているわけですけれども。
安倍:ところでいきなり単刀直入にお聞きしますけれども、小池新都知事も利権を徹底的に追及していく、今回透明性が大事で、特別チームを作るという話なんですけれども若狭さんを副知事の有力候補であると話をなさっています。一方で10月の東京23区の補選、小池さんが衆議院議員でなくなったということで、お出になって衆議院議員に軸足をおくということも、どっちもありうる。どうなんでしょうか?今現在。
若狭:あの私もこの選挙期間中に、小池都知事が実現した折には、利権追及ということについて、私のこれまでの職歴からして、十分に役に立てるし、役に立たなければいけないと思っています、ということを皆さんに訴えたんですよね。ですからある意味、これだけ支持を受けて、都知事に小池さんがなった以上は 私の言葉通りに利権追及、そしてきれいな形で東京オリンピック・パラリンピックを迎えるということからすると、なんらかの形でやはりきちっと役に立たなければいけないと思ってますから、そのひとつのやり方としては、副知事ということで、その立場で決定して利権を追及する、ということは選択肢としてはあると。
安倍:あると。
若狭:ただ他方で私は、テロ対策に関しては専門家なんです。東京地検の公安部長をやってまして、8年前に洞爺湖サミットというときに責任者だったわけです。テロ対策に関しては非常に思い入れが強いんです。今現在、たぶん国会議員の中では法整備については、たぶん一番技能はあると思っているんです。
安倍:今回は法案を時限立法で、前の遠藤大臣にご説明に行かれましたよね?
若狭:そうですね。そういう意味で、オリンピック・パラリンピック用でもいいのですが、対策法を作らないと、本当に大規模テロがオリンピック・パラリンピックの時に起きてしまうと、大変なことになると。
Aya:それは今から準備しないと間に合わないわけですよね?
若狭:はい、おっしゃる通りですね。直前に法律ができても意味がない。そういうことで、国会議員として法整備を成し遂げたいという気持ちは強いんです。そうすると、国会議員の立場でそういう力を尽くすと、ひいてはテロ対策で言えば東京オリンピック・パラリンピック用に効果がある、東京都においても効果がある、貢献できるということなので、国会議員のままテロ対策の法整備に力を尽くしたい、っていう思いもかたやあるんですね。
安倍:なるほど
若狭:それが、非常に拮抗していると。ただ、もうひとつの視点としては、副知事というのは、東京都議会が承認しないと副知事になれないと。
安倍:そういうことなんですよね。
若狭:今の東京都自民党が私が副知事になって利権の問題を追及することにおいて、それは結構なことでございますと。
安倍:ぜひ副知事になってくださいと、いいますかね(笑)
若狭:今の現状で、少なくともHPから私の名前と写真が削除されるくらいですから。
安倍:なんかのミスかもしれませんけれどもね。
若狭:そしたらまた明日復活してるかもしれませんね(笑)
安倍:誰かチェックしてください。
若狭:まぁ今のところ恨み骨髄だとすると、私が副知事になると、同意をしない、承認をしないという可能性が高い訳ですよね。その副知事人事でがたがたして、で、それによって都政が停滞するっていうのは、それは非常によろしくないことなので、まぁそういうことを考えて、総合的に考えると、どっちが望ましいか、ということはもう少し考える必要がある。
安倍:そこは、小池さんはどう思ってるんでしょうね、これからはブルーオーシャンだとおっしゃってるわけだけれども、実際僕も記者会見で質問しましたが、各会派ときちっと話をしてっていうことをおっしゃってますけれどもね。融和というのか、まず話し合いをしましょう、ということはあるわけですよね?
若狭:そうですね。
安倍:だけれども、若狭さんを任命することは、今の多数会派がどうなんだと、敵対的なのか、それとも融和的なのか、ひとつの試金石になるわけだけれども、やるかどうかですよね。
若狭:ある意味、けんかを売る必要はないと思うんですね。都政を停滞させる必要はないし、むしろ停滞させてはいけない。そういう意味においてはやっぱり胸襟を開いて、きちんと対話の下で都政を進めると、いうのは絶対必要ですよね。
他方、選挙期間中に言ってた利権の追及も当然やらなければいけない。その二つを合わせてやることが必要なんですが、とかく小池知事になると利権の追及とかいって、都政の混乱に終止符が打てないとか、都政が停滞する、というようなことを言う人がいますけれど、そんなことは決してなくて、小池都知事は「都民ファースト」といって、都民のためにどうしたらいいか、都政を停滞させずにしっかりと進める、ということにすごい重きを持っているから、対話する姿が見えてきているわけであって、なにも公約がトーンダウンしているというふうに見る必要はないと思う。
安倍:すぐね、メディアがやってることと言ってることが違う、と言いますけど、まだ2、3日ですからね。そうはいっても都政改革本部作る、とか、オリパラの調査チーム作る、とか具体的な話をすでにしてますからね。トーンダウンをしてるようには思わないし、そこは駆け引きですよね。要するに押したり引いたりということがあるので。個人的には副知事になって頂きたいと思うけれど、今ここでバーンと出すと、ものすごいハレーションは激しいでしょうね。
若狭:ハレーションはですから、今感情的な面が出てると思うんです。ある意味冷静さがない、と言ってもいいと思うんですけれども、都連側の一部は。坊主憎けりゃ、というような状態だと思うので、どうしてもハレーションは今のままだと非常に大きなものが予想されます。
安倍:仮に、これから決断されていく訳ですけれども、東京10区にの衆議院の補選に出られることになっても、基本的に小池知事に対してはバックアップされていくと?
若狭:それはもとよりで、小池さんとの関係というよりも、応援演説を聞きに来て頂いた人に、私もとにかく都民の方に対して尽くしますと、約束してるようなものですから、都民の方に対しての私の政治家としてのスタンスとして、都政に関わっていくと、いうことは考えています。
安倍:衆議院として、先ほどのテロ対策法案の話もありましたけれども、都知事が進めようとしている、いろんな問題に対して関わっていく、テクニカルなところはどうなんでしょう?可能なんでしょうか?
若狭:それは今もそうなんですけれども、東京都連所属の国会議員ですから、他府県の国会議員が東京都のことばっかりやってると、若干違和感が出てくるかもしれませんが、東京都選出の、特に私の今の立場は東京比例といって、東京都全体の代表のようなものなんです。ですから、それが今の立場でも、仮に10区という豊島、練馬の代表になったとしても、東京都の選挙区であれば、当然東京都のことに関心と責任を持たなきゃいけない、ということは言えると思うんですよね。
安倍:まだ決断までには時間がかかると。
若狭:そうですね、もう少しいろんなことを考える時間は頂きたいと。ま、選挙期間中の話で言うと、一言で言うと刺激と感動ですよね。ある意味、そういう選挙って数は多くないと思うんですけれども、ほんとに、刺激と感動という言葉につきると私は思っているんです。刺激って言うのは、組織を相手に最初は本当に小舟で手こぎボートかなんかで出発すると、相手は戦艦、というような、力に歴然に違いがある、という中で戦うということで、極めて刺激的だった。で、そのうち、支援が広がって、もう感動の嵐のようなものになって、刺激と感動なんですね。選挙期間中も、そういう意味で、感動の中で終わった。で、選挙終わって、小池知事も終わってすぐさま、翌日くらいからもう山積する、たまりにたまったことに取りかかる訳ですから、かなり大変だと思いますし。
安倍:でもずーっと選挙戦みてて、あの人タフですね。
若狭:いや、ほんとにタフですね。
安倍:連日たぶん本当に2、3時間睡眠だと思うんですよ。当選して終わった後も、朝は我々の記者会見、夜もずーっとテレビに出てるじゃないですか。平気な顔してますもんね、もちろん平気ではないと思うけど、ものすごい精神力です。
若狭:肉体的、精神的なタフさは、私も2人で福島第一原発に視察に行ったことがあるんですよ。去年の夏ですかね。防護服を着て、暑い中二人で。
安倍:僕も去年行きました。
若狭:そういう姿を見ていて、タフだなと思っていたんですけれども、今回間近に見ていて、半端じゃないタフさだなと。精神的にもタフですけれどもね。
(その2に続く。この記事は、Japan In-depthチャンネル 2016年8月3日放送 の内容を文字に起こしたものです。全2回)
トップ画像:Japan In-depthチャンネル「今後の身の処し方、話します!若狭勝衆議院議員」より©Japan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。