泥仕合のヒラリーvsトランプ TV討論会2回目
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(10月10-16日)」
米大統領選も遂に終盤戦に入った。9日には大統領候補による第2回テレビ討論会が開かれた。一回目討論会の結果については別のコラムに、アリvs猪木並みの凡戦であり、CNN世論調査など当てにならない。準備不足のトランプがスタイルを変えられず、準備万端のヒラリーに有権者の期待値を超える言動はなかった、などと書いた。
要するに、第一回は互角というより、両者とも既得支持層を超える得票拡大に失敗したということだ。では第二回目はどうだったか。第一回よりも更に酷い出来だったとしか言いようがない。米大統領選を追い始めて40年、これほどバラエティショーとしては出来が悪く、政治討論会としては低レベルの、TVイベントは見たことがない。
トランプ候補は、意味のない突っ込み、議論のすり替え、責任転嫁の開き直り、を繰り返すだけ。つまり、トランプはトランプのままなのだが、結局ヒラリーも泥仕合にのめり込んでいった。恐らく第三回目も似たり寄ったりだろうから、もう見る気もしなくなった。それでも、11月の投票日に何が起きるかについて予測できる自信は今もない。
○南北アメリカ
筆者の個人的経験では、米国の無党派層が投票態度を決めるのは最後の一カ月間だ。今回は、トランプにもヒラリーにも疑念を抱く名もない庶民たちが、どちらの候補を「やむを得ない次善の選択」として選ぶか、言い替えれば、「どの程度の変化までなら許容できるか」が最終的に決め手となるだろう。常識的な結果になると良いが。
〇欧州・ロシア
10日にユーロ加盟国がギリシャの財政救済パッケージについて会合を持つ。次回ギリシャが受け取る額は28億ユーロだそうだ。こんなことを何時まで繰り返すのか。何時まで続くのかといえば、13日には、英国EU離脱プロセスを開始するために英政府が議会承認を必要とするか否かにつき英国の高等法院が審議を始めるそうだ。
〇東アジア・大洋州
10日には北朝鮮労働党が建党71周年を祝う。再びミサイル発射や核実験を実施するのではないかとの噂が絶えないが、筆者は何も起きなくても全く驚かない。北朝鮮は建党記念日に合わせて戦略核ミサイル部隊を作っているのではなく、その核開発計画の節目がたまたま●●記念日の前後だったにすぎないと思うからだ。
13日に日本の外務次官が訪露する。12月のロシア大統領訪日準備の一環だろうが、噂される解散総選挙の日程も絡むので大いに注目したい。また、同日からは中国国家主席は就任後初めてカンボジアを訪問するという。これまで訪問がなかったということは、中国にとってカンボジアの優先順位が低いということだろう。
〇中東・アフリカ
10日にロシア大統領がトルコを訪問する。一時はロシア軍機撃墜事件で険悪化した両国関係だったが、トルコ側の譲歩で正常化された経緯がある。今回のトルコ訪問はロシア側も両国関係の現状を評価している証拠だろう。個人的にはシリアの将来について両首脳が何を話すのかに強い関心がある。
12-13日にはイラク・クルド自治政府大統領がイランを訪問する。この動きもシリア問題の将来を見る上では見逃せない。13日にはイスタンブールで世界エネルギー会議が開かれ、OPECと非OPEC諸国の関係者が集まる。今後の原油価格を占う上でも注目すべきだろう。
〇インド亜大陸
15-16日にインドでBRICS首脳会議が開かれる。BRICSが注目されたのは一昔前の話。今は経済的苦境にある国が多いのだが、今回の首脳会議では一体何が議論されるのだろうか。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表
1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。
2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。
2006年立命館大学客員教授。
2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。
2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)
言語:英語、中国語、アラビア語。
特技:サックス、ベースギター。
趣味:バンド活動。
各種メディアで評論活動。